【臨床検査】尿酸(UA)について現役臨床検査技師が徹底解説します

みなさんこんにちは!

「Webサイトエンジニア」×「臨床検査技師」のハイブリットおじさんこと、ウエノです。

Webサイトエンジニアではありますが、現役で臨床検査技師を15年しています。

今回は検査でよく測定される「尿酸(UA)」について徹底解説します。

このブログは一般の方が見ても、同業の臨床検査技師が見ても有益となるように、わかりやすくも専門的な知識を散りばめ「超勉強になった!」と感じてもらえることを目的に設計しています。

そしてみなさんがこのブログで得た知識を周りの方々に語り、ドヤ顔をしてもらえれば本望であり、ブログを書いている僕としてもこの上なく嬉しいです。

では、尿酸について解説していきます。どうぞっ!

【尿酸(UA)】とは

尿酸(UA)とは核酸の主成分であるプリン体の最終代謝産物であり、生体内に高濃度で残存し続けると結晶化し、激しい痛みを起こさせる物質です。

この代表的な疾患はみなさんもご存知の「痛風」です。

関節に結晶化した尿酸が溜まりやすいので、よく「膝が痛い」と耳にしますよね。

次に尿酸の代謝経路について、尿酸の生成には主に2つの経路があり、メインとしては生体内の新陳代謝からおよそ80%、残りの20%は食事からの摂取で生成されます。

まずこの2つの経路から共通して言えることは、「尿酸はプリン体の代謝産物である」ということです。

ビールのCMでよく「プリン体ゼロ!」と言われるアレです。

プリン体とは核酸を構成する塩基成分の中でプリン骨格を持ったものを言います。

核酸とはDNAとRNAを指し、それらを構成する塩基成分にはアデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルの5つがあり、その中でプリン骨格を持つプリン体はアデニンとグアニンです。

このアデニンとグアニンの代謝の果てに尿酸が生成されるのです。

尿酸の生成経路の話に戻り生体内の新陳代謝について、古くなった細胞が破壊されると核酸も破壊されますので、プリン体は分解されて尿酸となります。

また生体にとってのエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)も分解されると尿酸となります。

これらの要因で生体中の尿酸の80%ほどは構成されています。

残りの20%について食事からの摂取ですが、プリン体は細胞内に含まれており、細胞数の多いところや細胞分裂が盛んな組織にプリン体が多くなります。

よって肉や魚介類にはプリン体が多く、これらの食品の摂り過ぎは尿酸値の上昇に繋がります

新陳代謝や食事からの摂取で獲得されたプリン体は肝臓で分解されて1日700g産生されます。

そのうち500gは腎臓から尿中に排泄され、残りの200gは腸管から便として排泄されて平衡を保っています

尿酸はこのような代謝経路をとります。

何かしらの理由で生成されるプリン体の量が過剰であったり、プリン体を過剰に食事から摂取したり、腎機能障害のために尿中に排泄されないなどが起きると、通常は生成された同等の量を排泄してプラスマイナスゼロにしているペースが崩れ、血中に増加した尿酸は結晶化して炎症を起こし激痛を走らせます

【尿酸(UA)】の基準範囲

尿酸の基準範囲には性差があります。

男性:4.0 mg/dL ~ 7.0 mg/dL

女性:3.0 mg/dL ~ 6.0 mg/dL

※基準範囲は施設や文献によって多少前後します。これはそれぞれの機関がそれぞれの条件で、それぞれの母集団から得られたデータから導き出したものを使用しているためであり、多少バラつきがあります。

なぜ性差があるのかといいますと、女性ホルモンには腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあるからです。

ですので、女性は男性より血中に尿酸が溜まりにくい体質となりますので、基準範囲もより低い数値となります。

【尿酸(UA)】の臨床的意義

なぜ尿酸を検査するのでしょうか。

それは腎機能障害の診断、痛風のリスク診断、プリン体の代謝状態の把握に有用だからです。

尿酸は腎臓から尿中に排泄されるため、腎機能に障害が生じると尿中への排泄が低下し血中に停滞しますので、尿酸値は高値となります。

ですので腎機能評価に有用なのです。

また尿酸値が7.0mg/dLを超えると、血液に尿酸が溶け切らなくなるため結晶化し、関節や組織に溜まっていきます。

その蓄積された尿酸結晶に対して白血球などの免疫細胞が反応し、炎症を起こす物質が放出され痛みを感じさせます。

これが痛風の痛みの原因であり、尿酸値を測定することによってこの痛風になるリスクが今どのくらいなのかがわかります。

腎機能障害の診断には、尿酸の他に尿素窒素(UN)やクレアチニン(CRE)があります。

それぞれの検査項目の詳しい解説は下記のブログで紹介していますので併せてどうぞ。

尿素窒素(UN)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。

クレアチニン(CRE)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。

尿素窒素もクレアチニンも上昇していないのに関わらず、尿酸だけが上昇していると腎機能障害による上昇でないことが予想されます。

他の2項目と違い尿酸はプリン体の最終代謝産物ですので、どうやらプリン体の代謝異常か過剰摂取が疑われます。

そのようなあたりをつけるのにも尿酸検査は有用です。

もう少し掘り下げておくと、腎機能障害以外の要因で痛風を起こしやすい人の特徴は以下となります。

一緒に注意書きもしておきましたので、ぜひ参考にしてみてください。

  • よくお酒を飲む

    お酒の中でも特にビールはプリン体成分が多いですので飲み過ぎには注意しましょう。
    昔と違い最近では「プリン体ゼロ」を売りにしているビールが多くなりましたが、アルコール自体に尿酸値を上げる作用があり、こちらの要因の方が尿酸値上昇の原因としては大きいので、まったく安心してはいけません。
    「プリン体ゼロのビールだからたくさん飲んでも問題ないよね?」は大きな間違いですので注意してください。
    アルコールが入っている以上は尿酸値上昇がつきまといますので適量に収めましょう

  • プリン体の多い食事をする

    プリン体は肉や魚、レバーなどの内蔵系食品、干物に多く含まれます。
    食べてはいけないのではなく食べ過ぎ注意ですので、もし尿酸値が高くてこれらの食事が多い人は、食生活の改善を検討した方が良いでしょう。
    プリン体の多い食事を減らし、野菜と水分を多く摂ることが改善への近道です。

  • 肥満

    肥満は高血糖になりやすい状態であり、高血糖を招く要因の一つに「インスリンの効きが悪くなる」というのがあります。
    これは肥満だと内臓脂肪が大量に蓄積しており、その内蔵脂肪から放出される「アディポカイン」という物質がインスリンを阻害するからです。
    インスリンは血糖値を下げる働きがある一方で、尿酸の排泄を抑制する働きがあります。
    アディポカインが大量にあるせいでインスリンもその分大量に放出しなければならないので、尿酸の排泄も抑制されまくりますので血中に停滞しまくりです。
    よって尿酸値が高値となります。また単純に過食も原因となります。

  • 水分をあまり摂らない

    尿酸を尿中に排泄するにはそれなりの尿量が必要ですので、そもそも摂取する水分量が少ないと尿酸を尿中に排泄しきれないので尿酸値が高値となります。
    推奨としては1日2リットル以上の水やお茶を摂取しましょう。

  • ストレスが多い

    ストレスが多いと尿酸が高くなる傾向があるようです。ストレスが多いと交感神経が優位に働きます。
    交感神経優位な状態と言うのはリラックスしているときではなく運動している状態のときを指します。
    交感神経優位の状態では内臓への血流量が減少しますので、尿酸を尿中に排泄しにくくなります。
    これが長期的に続くと尿酸が血中に蓄積されて高値化すると考えられています。

  • 過剰な運動をする

    短距離走や筋力トレーニング、ベンチプレスなどの息をこらえて行う無酸素運動は尿酸値上昇の要因となります。
    無酸素運動だとエネルギーの発生に酸素を使用せずにグルコース(糖)を使用します。
    グルコースをエネルギーとして分解する際に尿酸が作られますので、できれば有酸素運動が望ましいです。

【尿酸(UA)】が高値を示す状態・疾患

尿酸が高値を示す疾患として代表的なものはやはり痛風ですね。

発作的に手足の関節が赤く腫れて、熱感を伴う激痛が起きることから「痛風発作」とも言ったりします

激痛は1~2週間続いて自然とおさまっていきます。

もしこのような状態なのにも関わらず病院にも行かずに放っておくと、痛みの起きていた部位の周囲に尿酸結晶が蓄積されてコブのように腫れてきます。

これを「痛風結節」といい再び激痛に襲われます。

またこれは繰り返し何度も起きるのですが、起きるたびに病態はさらに悪化していきます。

尿酸結晶が腎臓に溜まっていくと炎症を起こし、腎機能が低下した結果CKD(慢性腎障害)に繋がることもあります。

これを「痛風腎」と呼び、炎症を起こすだけでなく溜まった尿酸結晶は他の物質ともくっついて次第に大きくなり、「尿管結石」となってさらに悪さをします。

尿路結石ができると、それが尿に乗って尿路を移動する際に尿管を傷つけ、腹部や背部の痛みや出血して血尿になることもあります。

尿酸値が高いと痛風だけでなく、合併症を起こしやすいのも特徴であり、狭心症や心筋梗塞の原因になることもあります。

ちなみに「痛風」という疾患名の由来は「風が吹いても痛い」という、ほんのちょっとしたことでも痛みを感じるところからこのような名前がついたようです。

尿酸(UA)が高値を示す状態としては、よくお酒を飲む人、プリン体が多い食事を摂る人、肥満、あまり水分を取らない人、ストレスが多い人、無酸素運動が多い人などが挙げられます。

【尿酸(UA)】が低値を示す状態・疾患

尿酸が低値を示す状態は臨床的にあまり意義はありません。

しかしここ最近、2018年に「腎性低尿酸血症診療ガイドライン」というものが発行され、「腎性低尿酸血症」という疾患名が注目されるようになりました。

腎性低尿酸血症というのは、血中尿酸値が2.0mg/dL以下を示す尿酸輸送体の遺伝子変異の疾患です。

本来、尿酸が腎臓から尿中に排泄される際、まずは腎臓の濾過装置である糸球体を通るときにほぼ100%濾過されて原尿となります。

次にその原尿が近位尿細管に通るときに「尿酸輸送体」の働きで尿酸の多くは再吸収されて体内に戻されます。

戻ったうちの約6~10%が尿として排泄されるようになっています。

しかし腎性低尿酸血症の場合は近位尿細管で尿酸再吸収を担う尿酸輸送体の遺伝子変異で機能が低下するため、尿酸の再吸収量は減少し、尿中への排泄量が増加します。

よって血中の尿酸値は低値となるのです。

腎性低尿酸血症を患うと尿路結石ができやすくなったり、運動後急性腎症という短距離走や競輪などの強い無酸素運動を行うと背部痛や嘔気・嘔吐を引き起こしたりと、2つの合併症が高頻度で起きると知られていますが、一般的にはあまり知られていません。

また原因が遺伝子変異ですので有効となる治療方法が確立されていませんが、知っておくと、もしかしたらみなさんの周りでこのような症状を起こして困っている人に教えてあげることができるかもしれません。

その時はぜひみなさんの手を差し伸べてあげてドヤってくださいね。

【尿酸(UA)】の生理的変動

尿酸は食事と飲酒の影響をダイレクトに受ける項目であることは、ここまで読み進めてきたみなさんも知っての通りです。

食事に含まれるプリン体や、アルコールを分解する際に発生する尿酸が血中尿酸値を引き上げます。

また尿酸は性差が顕著であり、基準範囲の項でも述べましたが女性ホルモンには腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあるため、男性に比べて女性の方が低値になります。

しかし女性でも閉経すると女性ホルモンの分泌が少なくなりますので、尿酸値が男性の基準範囲に近づくようになります。

【尿酸(UA)】の検査について ※臨床検査技師向け

尿酸についてはこれまでの解説で一通り済みましたので、次からは尿酸の検査について臨床検査技師向けに専門的な知識や検査に影響を及ぼす要因について解説していきます。

一般の方でも知見を広げる意味で、ご興味があればどうぞ!

尿酸の主な測定法は「酵素法」が一般的です。

今回は酵素法の中でもメジャーな「ウリカーゼ比色法」についてご紹介します。

測定原理は検体と試薬が混ざると、検体中の尿酸はウルカーゼの作用を受けて酸化されて過酸化水素(H2O2)が生じます。

生成された過酸化水素はペルオキシダーゼ(POD)によってHMMPS(N-(3-スルホプロピル)-3-メトキシ-5-メチルアニリン)と4-アミノアンチピリン(4-AA)とを定量的に酸化縮合させ、青色の色素を生成させます。

この青色の吸光度を測定することによって尿酸濃度を求めます。

溶血、乳び、黄疸による色の影響、測定に干渉する物質等は特にありません。

【尿酸(UA)】のまとめ ※さくっとまとめて見れる一覧表付き

ここまで尿酸について1つ1つ網羅的に解説してきましたので、あとはみなさんがご自身のメモリ(脳)にインプットするだけです。

インプットしたら今度はアウトプットしましょう。

周りの方々に最高のドヤ顔で語っていただき、知識をばら撒くと同時にご自身の理解度確認も行ってみてください。

忘れている、理解できていなかったところがあればまたこのブログに戻ってきて、もう一度熟読してみてください。

足りないことがあれば、ぜひお気軽に僕にご連絡ください。

Twitterからでもお問い合わせからでも何でも良いです。

答えをお返しすると同時に必要であればブログに追記しますので、次に閲覧される方々にさらなる情報をばら撒くことができるようになります。

ぜひともご協力いただければ嬉しいです!

また、さくっと確認したいときにまとめて見れる一覧表を下に作成しました。

ぜひご活用ください。

【尿酸(UA)】まとめ
尿酸とは 核酸の主成分であるプリン体の最終代謝産物であり、生体内に高濃度で残存し続けると結晶化し、激しい痛みを起こさせる物質
役割 「抗酸化作用(身体を酸化から守り老化や病気を緩和する)」があると言われているが定かではない
臨床的意義 腎機能障害の診断・痛風のリスク診断・プリン体の代謝状態の把握
基準範囲 男性:4.0 mg/dL ~ 7.0 mg/dL
女性:3.0 mg/dL ~ 6.0 mg/dL
測定法 酵素法(例:ウリカーゼ比色法)
高値を示す状態・疾患 痛風、尿路結石、飲酒、食事でプリン体を多く摂取、肥満、水分摂取量が少ない、ストレスが多い、無酸素運動が多い
低値を示す状態・疾患 腎性低尿酸血症
生理的変動 男性>女性
干渉物質 特になし

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このブログがみなさまのお役に立てれば幸いです。

最後まで、ご閲覧いただきありがとうございました。

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尿素窒素(UN)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。

「精度管理」について、現場で使える考え方を解説します。具体的には「精度管理とは何?なぜやるのか」とかの話です。わりとこの初歩的なところでさえも答えられない子が多いのでブログにして発信します。ちなみに「現場で使える」というのがポイントで教科書に書いてあるような表面的な話ではなくでガチめの話をします。

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