【臨床検査】無機リン(IP)について現役臨床検査技師が徹底解説します

みなさんこんにちは!

「Webサイトエンジニア」×「臨床検査技師」のハイブリットおじさんこと、ウエノです。

Webサイトエンジニアではありますが、現役で臨床検査技師を15年しています。

今回は検査でよく測定される「無機リン(IP)」について徹底解説します。

このブログは一般の方が見ても、同業の臨床検査技師が見ても有益となるように、わかりやすくも専門的な知識を散りばめ「超勉強になった!」と感じてもらえることを目的に設計しています。

そしてみなさんがこのブログで得た知識を周りの方々に語り、ドヤ顔をしてもらえれば本望であり、ブログを書いている僕としてもこの上なく嬉しいです。

では、無機リンについて解説していきます。どうぞっ!

【無機リン(IP)】とは

無機リン(IP)とは腎や副甲状腺が正常に機能しているのかを間接的に見る検査項目です。

特に生体内での働きがどうというよりも、血中の濃度増減によって臓器の状態を見ることがメインとなります。

生体内の分布としては、無機リンの80%~90%はカルシウムと結合してく骨にリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)として存在し、残りの15%くらいが細胞内に存在しています。

無機リンと関係の深いカルシウムについては下記のブログで紹介しており、この先カルシウムの知識があった方が理解度が間違いなく深まりますので、もしまだ読まれていないのであれば必読推奨です。

カルシウム(Ca)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。

無機リンもカルシウムに同じく、食事によって摂取され活性型ビタミンDのサポートによって小腸から吸収されます。

吸収されたごく少量の無機リンのほとんどはカルシウムと結合してヒドロキシアパタイトとなり骨に貯蔵され、吸収されなかった95%以上の無機リンは尿中または便中に排泄されます。

排泄される無機リンのうち、60%が尿中に、残りは腸管から便中に排泄されます。

尿中に排泄される無機リンは尿細管でそのほとんどが再吸収されるのですが、副甲状腺機能が正常であればPTHがこの再吸収を阻害して無機リンをどんどん尿中に排泄させます。

このようにPTHが血中無機リンの濃度調整に密接に関わっています。

血中カルシウム濃度が低下すると副甲状腺からPTHが分泌され、骨を溶かして血中にカルシウムを供給するわけですが、骨ではヒドロキシアパタイトとしてカルシウムと無機リンが結合していますので、PTHの作用によってカルシウムと一緒に無機リンも血中に溶け出します

PTHは無機リンの尿細管の再吸収を阻害して尿中への排泄を促進しますので、血中に増えた無機リンは血中に停滞することなくどんどん尿中に排泄されます。

ですので、もし副甲状腺機能が悪くなりPTHの分泌が低下しますと、無機リンの尿中への排泄も減少しますので血中無機リン濃度は高くなります。

逆に副甲状腺機能が異常に亢進しますとPTHがやたら分泌されてしまいますので、無機リンは必要以上に尿中へ排泄されてしまい血中無機リン濃度は低くなります。

また、腎機能が悪くなると尿中への排泄機能が低下しますので、こちらの場合ではPTHに関係なく血中無機リン濃度は上昇します。

このように、無機リンはその血中濃度を検査することによって、腎や副甲状腺が正常に機能しているのか間接的に見ることができる検査項目なのです。

最後に、骨形成関連として関係の深いマグネシウムについても次のブログで解説していますので併せてどうぞ。

マグネシウム(Mg)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。

【無機リン(IP)】の基準範囲

無機リンの基準範囲は2.4 mg/dL ~ 4.3 mg/dLです。

無機リンには性差はありませんので、男女共通の基準範囲となります。

※基準範囲は施設や文献によって多少前後します。これはそれぞれの機関がそれぞれの条件で、それぞれの母集団から得られたデータから導き出したものを使用しているためであり、多少バラつきがあります。

【無機リン(IP)】の臨床的意義

なぜ無機リンを検査するのでしょうか。

それは腎機能と副甲状腺機能を見るためです。

腎機能が悪くなれば、尿中への無機リンの排泄量が減るため血中に停滞して高値になります。

副甲状腺機能が亢進すればPTHが異常に分泌されるため、無機リンは必要以上に尿中へ排泄されてしまい血中無機リン濃度は低値となります。

副甲状腺機能が低下すればPTHの分泌が減少するため、尿細管での無機リンの再吸収を阻害できなくなり血中無機リン濃度は高値となります。

無機リンの主となる検査の意義、すなわち臨床的意義はこのようになります。

【無機リン(IP)】が高値を示す状態・疾患

無機リンが高値を示す状態・疾患としては、「副甲状腺機能低下症」と「腎機能障害(例えばCKD:慢性腎臓病)」が代表的です。

排泄される無機リンのうち60%は尿中に排泄されますので、腎機能が悪くなると尿の生成が上手くいかなくなり血中に停滞し高値となります。

また、副甲状腺から分泌されるPTHには尿細管の無機リン再吸収能を阻害し尿中に排泄させる効果がありますが、副甲状腺機能が低下してPTHの分泌が減少すると無機リンのが尿中への排泄も減少します。

よって無機リンが血中に停滞するため高値となります。

【無機リン(IP)】が低値を示す状態・疾患

無機リンが低値を示す状態・疾患の代表的なものは「副甲状腺機能亢進症」、「ビタミンD不足・欠乏症」です。

副甲状腺機能亢進症ではPTHが過剰に分泌されますので、無機リンの尿中排泄が亢進し血中無機リン濃度は低値となります。

ビタミンD不足・欠乏症では、食事の摂取によって得られた無機リンを小腸で吸収する能力が落ちますので、血中無機リン濃度は低値となります。

なぜなら無機リンもカルシウムに同じく食事によって摂取され、活性型ビタミンDのサポートによって小腸から吸収されるからです。

ビタミンDが不足・欠乏すれば活性型ビタミンDの前駆体であるビタミンDが足りませんので、結果無機リンの摂取量が減少します。

【無機リン(IP)】の生理的変動

閉経後の女性は男性より0.3mg/dL程度高く、夜間の方が朝より10~30%高いとされています。

【無機リン(IP)】の検査について ※臨床検査技師向け

無機リンについてはこれまでの解説で一通り済みましたので、次からは無機リンの検査について臨床検査技師向けに専門的な知識や検査に影響を及ぼす要因について解説していきます。

一般の方でも知見を広げる意味で、ご興味があればどうぞ!

無機リンの主な測定法には、「フィスケ・サバロー法」や「モリブデン酸還元法」が国家試験に出やすいですが、実際の臨床の現場では酵素法を使用しています。

今回は酵素法の代表的な測定法である「PNP-XOD法」をご紹介します。

検体と試薬を混合すると検体中の無機リン(IP)はプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)の作用によりキサントシンと反応し、キサンチンとリボース1-リン酸を生じます。

生成したキサンチンはキサンチンオキシダーゼ(XOD)の作用により尿酸(UA)と過酸化水素(H2O2)となり、さらに過酸化水素はペルオキシダーゼ(POD)によって4-アミノアンチピリン(4-AA)とN-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(HDAOS)を酸化縮合し、キノン色素を形成します。

このキノン色素を比色測定することにより無機リン濃度を求めます。

なお内因性のキサンチンは第一試液中のXODとカタラーゼの作用により消去されます。

反応図

強溶血で若干の高値になることがあります。

【無機リン(IP)】のまとめ ※さくっとまとめて見れる一覧表付き

ここまで無機リンについて1つ1つ網羅的に解説してきましたので、あとはみなさんがご自身のメモリ(脳)にインプットするだけです。

インプットしたら今度はアウトプットしましょう。

周りの方々に最高のドヤ顔で語っていただき、知識をばら撒くと同時にご自身の理解度確認も行ってみてください。

忘れている、理解できていなかったところがあればまたこのブログに戻ってきて、もう一度熟読してみてください。

足りないことがあれば、ぜひお気軽に僕にご連絡ください。

Twitterからでもお問い合わせからでも何でも良いです。

答えをお返しすると同時に必要であればブログに追記しますので、次に閲覧される方々にさらなる情報をばら撒くことができるようになります。

ぜひともご協力いただければ嬉しいです!

また、さくっと確認したいときにまとめて見れる一覧表を下に作成しました。

ぜひご活用ください。

【無機リン(IP)】まとめ
無機リンとは カルシウムと同じく大部分が骨に存在している物質
役割 カルシウムと同じく骨を形成
臨床的意義 副甲状腺機能と腎機能の評価
基準範囲 2.4g/dL ~ 4.3g/dL
測定法 酵素法(PNP-XOD法)
高値を示す状態・疾患 副甲状腺機能低下症、CKDなどの腎機能障害
低値を示す状態・疾患 副甲状腺機能亢進症、ビタミンD不足・欠乏症
生理的変動 閉経後の女性でやや高値、朝より夜間の方が高値
干渉物質 強溶血で若干高値

最後に臨床検査技師のみなさん、今の年収には満足していますか?

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このブログがみなさまのお役に立てれば幸いです。

最後まで、ご閲覧いただきありがとうございました。

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