1-2. ②血液凝固作用の活性化因子
みなさんは傷口から出血したときに、身体がどのように止血を行っているのかご存知でしょうか。
止血には大きく分けると二段階のステップがあり、それぞれ「一次止血」と「二次止血」といいます。
出血が起きる、すなわち血管が破れるとまずは血管の収縮が起こり、縮んで傷口を小さくします。
すると血中に流れる「血小板」が傷口に集まってきて、「血栓」と呼ばれる血小板でできた「栓」を形成して傷口を塞ぎます。
これが一次止血です。
一次止血で傷口が塞がって問題解決のように思えますが、じつはこの血栓は脆弱であり、壊れやすい栓なのです。
衣服でこすれたり、皮膚の伸縮などの軽い衝撃でもすぐに壊れてしまいます。
そこでこの栓をより強固で頑丈なものに仕上げるために二次止血が起きます。
一次止血に続き、血中を流れる「凝固因子」と呼ばれる12種類の物質が連鎖的に反応し、最終的に「フィブリン網」という「網」が血小板で出来た血栓を覆い、ガッチリと固め「蓋」となります。
これで止血が完了し、みなさんもよく見る「かさぶた(専門用語では「フィブリン血栓」といいます)」ができ、傷口が完全に塞がれます。
このように血小板の血栓ができてから「かさぶた」ができあがるまでを二次止血といいます。
ところで、止血の過程においてカルシウムはどの場面で活躍するのか、という話になりますが、それは二次止血の過程です。
凝固因子が連鎖的に反応し活性化していく中で、カルシウムはカルシウムイオンの形で凝固因子を活性化させる補助的な役割をします。
逆にいえば、カルシウムがなければ凝固因子の連鎖的な活性化が途中で止まってしまい凝固が起きなくなり、二次止血が完了しなくなります。
というように、カルシウムは止血の過程で重要な役割をしています。
血中にまったくカルシウムがない状態というのは生体において絶対に起きませんが、この性質を利用して検査に用いることは日常的に行われています。
例えば、凝固の検査です。
凝固の検査では、主にどのくらいの時間をかけて血が固まるのかを検査しています。
凝固検査用の採血管には「クエン酸ナトリウム」という脱カルシウム作用、要は血中のカルシウムを除去する働きのある物質が添加されており、採血菅に血液が入ってくると同時にカルシウムが除去されます。
上記の通り、カルシウムイオンがないと凝固作用は途中で止まってしまい凝固が完了しませんので、in vitro(試験管内)で凝固作用の検査が可能になります。
何を言っているのかといいますと、ここにカルシウムイオンを添加すれば凝固が再び開始されますので、みな同じ条件で血が固まるまでの時間を計測できるというわけです。
凝固検査の試薬にはカルシウムイオンが含まれていますので、全自動機器で大量の検体を検査でき、あとはその結果を基準範囲と見比べて凝固までの時間が延長していないかチェックするだけです。
これが凝固検査のカラクリです。
このようにカルシウムは、その性質を活かして検査にも役立っている成分なのです。