【臨床検査】カルシウム(Ca)について現役臨床検査技師が徹底解説します

みなさんこんにちは!

「Webサイトエンジニア」×「臨床検査技師」のハイブリットおじさんこと、ウエノです。

Webサイトエンジニアではありますが、現役で臨床検査技師を15年しています。

今回は検査でよく測定される「カルシウム(Ca)」について徹底解説します。

このブログは一般の方が見ても、同業の臨床検査技師が見ても有益となるように、わかりやすくも専門的な知識を散りばめ「超勉強になった!」と感じてもらえることを目的に設計しています。

そしてみなさんがこのブログで得た知識を周りの方々に語り、ドヤ顔をしてもらえれば本望であり、ブログを書いている僕としてもこの上なく嬉しいです。

では、カルシウムについて解説していきます。どうぞっ!

【カルシウム(Ca)】とは

カルシウム(Ca)とは生体内において最も多いミネラル成分であり、主として骨や歯を形成しています。

大人の場合では約1kgのカルシウムがあるといわれており、そのうちの99%が骨と歯に、残りの1%が血液中や細胞に存在して機能しています。

カルシウムといえば「骨」や「歯」というイメージ強いですが、じつはそのたったの1%の血液中や細胞に存在しているカルシウムが生体を維持する上で重要な役割を持っています

まずはそのカルシウムが持つ重要な役割について、4つに分けて解説していきます。

生体内では骨を作る「骨形成」と、骨からカルシウムを溶かして血中に供給する「骨吸収」が繰り返し起こり、血中カルシウムの濃度が調整されています。

※「骨吸収」と聞くと骨に何かが吸収されるイメージを持ち意味がわからなくなりやすいので、「骨(から)吸収」と覚えておくと骨からカルシウムを吸収するんだなと勘違いしにくくなりますのでおすすめです。

カルシウムの代謝としては、食事などで摂取したカルシウムは胃で溶かされ小腸で吸収されます。

吸収されたカルシウムは血液に乗って骨に運ばれ、骨形成に使用されます。

骨は人体を支えたり守ったりするだけでなく、血中カルシウム濃度が低下したときに供給できるように、カルシウムを貯蔵する役割もあります。

このようにカルシウムが骨として貯蔵されていることを「貯蔵カルシウム」といいます。

貯蔵カルシウムは「ヒドロキシアパタイト結晶」の形で骨に存在しています。

対して、血中や筋肉、神経細胞に存在しているカルシウムは「機能カルシウム」と呼ばれており、筋肉収縮や神経興奮の抑制、血液凝固の促進など、身体中の至る所で活躍しています。

機能カルシウムは消耗品ですので、上記のような代謝で絶えず使用され減少していきます。

そこで使用して減少した分のカルシウムは食事で摂取されるのが間に合わなければ、貯蔵カルシウム、すなわち骨からカルシウムを溶かして供給します。

貯蔵カルシウムは食事などから摂取した分から作られ骨を形成し、血中カルシウム濃度が低下すれば骨から供給するというサイクルが永遠と続けられ、常に血中カルシウム濃度は厳密に調整されています。

しかしなぜ、そのように血中カルシウムは骨を溶かすような無茶なことをしてでも、しっかりと濃度調整をするのでしょうか。

それは血中カルシウム濃度が高くても低くても生命維持に危機をもたらすからです。

代表的なものでいえば、低値ではテタニー(痙攣)を起こしたり、高値では昏睡や致死性不整脈を起こしたりと、カルシウム濃度異常による影響は甚大です。

ですので、血中カルシウム濃度は厳密に管理されていなければならない重要な成分となりますので、骨を多少溶かしてでも濃度調整が行われているのです。

また、カルシウムと一緒に骨を形成していて関連性の深い「無機リン」と「マグネシウム」についても、次のブログで解説していますので併せてどうぞ。

無機リン(IP)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。

マグネシウム(Mg)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。

みなさんは傷口から出血したときに、身体がどのように止血を行っているのかご存知でしょうか。

止血には大きく分けると二段階のステップがあり、それぞれ「一次止血」と「二次止血」といいます。

出血が起きる、すなわち血管が破れるとまずは血管の収縮が起こり、縮んで傷口を小さくします。

すると血中に流れる「血小板」が傷口に集まってきて、「血栓」と呼ばれる血小板でできた「栓」を形成して傷口を塞ぎます。

これが一次止血です。

一次止血簡略図

一次止血で傷口が塞がって問題解決のように思えますが、じつはこの血栓は脆弱であり、壊れやすい栓なのです。

衣服でこすれたり、皮膚の伸縮などの軽い衝撃でもすぐに壊れてしまいます。

そこでこの栓をより強固で頑丈なものに仕上げるために二次止血が起きます。

一次止血に続き、血中を流れる「凝固因子」と呼ばれる12種類の物質が連鎖的に反応し、最終的に「フィブリン網」という「網」が血小板で出来た血栓を覆い、ガッチリと固め「蓋」となります。

これで止血が完了し、みなさんもよく見る「かさぶた(専門用語では「フィブリン血栓」といいます)」ができ、傷口が完全に塞がれます。

このように血小板の血栓ができてから「かさぶた」ができあがるまでを二次止血といいます。

二次止血簡略図

ところで、止血の過程においてカルシウムはどの場面で活躍するのか、という話になりますが、それは二次止血の過程です。

凝固因子が連鎖的に反応し活性化していく中で、カルシウムはカルシウムイオンの形で凝固因子を活性化させる補助的な役割をします。

逆にいえば、カルシウムがなければ凝固因子の連鎖的な活性化が途中で止まってしまい凝固が起きなくなり、二次止血が完了しなくなります

というように、カルシウムは止血の過程で重要な役割をしています。

血中にまったくカルシウムがない状態というのは生体において絶対に起きませんが、この性質を利用して検査に用いることは日常的に行われています。

例えば、凝固の検査です。

凝固の検査では、主にどのくらいの時間をかけて血が固まるのかを検査しています。

凝固検査用の採血管には「クエン酸ナトリウム」という脱カルシウム作用、要は血中のカルシウムを除去する働きのある物質が添加されており、採血菅に血液が入ってくると同時にカルシウムが除去されます。

上記の通り、カルシウムイオンがないと凝固作用は途中で止まってしまい凝固が完了しませんので、in vitro(試験管内)で凝固作用の検査が可能になります。

何を言っているのかといいますと、ここにカルシウムイオンを添加すれば凝固が再び開始されますので、みな同じ条件で血が固まるまでの時間を計測できるというわけです。

凝固検査の試薬にはカルシウムイオンが含まれていますので、全自動機器で大量の検体を検査でき、あとはその結果を基準範囲と見比べて凝固までの時間が延長していないかチェックするだけです。

これが凝固検査のカラクリです。

このようにカルシウムは、その性質を活かして検査にも役立っている成分なのです。

生体は多数の筋肉で構成されており、腕や足だけなく内臓も筋肉でできています。

筋肉には意識して動かしているものと、内蔵のように意識とは関係なく動いている筋肉とがあり、そのどちらも常に収縮(縮む)と弛緩(伸びる)を繰り返しています。

カルシウムは、じつはこの筋肉の収縮と弛緩に深く関与しているのです。

筋肉中の筋線維には「筋小胞体」という構造があり、ここにはカルシウムイオンが含まれています。

筋小胞体からカルシウムイオンが放出されるともちろんカルシウムイオン濃度が上昇しますので、そこに同じ筋線維にある「トロポニンC」という物質が反応して結合します。

すると筋繊維の成分であるフィラメント同士の相互作用が起き、筋肉が収縮を起こします。

筋肉が収縮を起こすとトロポニンCがカルシウムイオンと分離しますので、筋小胞体はその分離したカルシウムイオンを取り込み、その結果カルシウムイオン濃度は低下してフィラメント同士の相互作用は止まり元の位置に戻ります。

これが筋肉の弛緩です。

このように、カルシウムは筋肉の収縮と弛緩に深く関与しています。

みなさんは高校生物で出てきたであろう「ニューロン」や「シナプス」という言葉を覚えていますでしょうか。

ニューロンとは神経細胞の最小単位をいい、その終末部分にあるのがシナプスであり、そこから神経伝達物質が放出されて次のニューロンや筋細胞に脳からの指令を伝えています。

これを「興奮の伝達(またはシナプス伝達)」といいます。

この興奮の伝達の流れの中にもカルシウムが関与し、重要な役割を果たしています。

どこでカルシウムが活躍しているのかといいますと、シナプスから次のニューロンや筋細胞に神経伝達物質を放出する直前です。

脳から伝えられてきた指令、すなわち「活動電位」がシナプスに到達するとカルシウムイオンチャネルという、シナプス外からカルシウムイオンを取り込む通り道が開放されます。

するとカルシウムイオンチャネルからカルシウムイオンが取り込まれ、シナプス内のカルシウム濃度が上昇したところで、神経伝達物質を含んだ「シナプス小胞」という物質がシナプスの末端部(シナプス前膜)に移動し、溶けて神経伝達物質が次のニューロンや筋細胞へと伝えれていきます。

要は、シナプス小胞の移動開始の合図のようなものと考えてもらえれば大丈夫です。

このようにカルシウムは神経の興奮の伝達にも関与し活躍しています。

これまでカルシウムの主な役割を4つに分けて解説してきました。

そんな生体にとって大変重要なカルシウムですが、じつは日本人は全体として慢性的なカルシウム不足なのです。

カルシウム摂取量が全年代において推奨量に達しておりません。

これは日本人の食文化にも問題がありますが、さらに日本の土壌がカルシウム不足を促進しています。

日本の土壌は火山灰地が多く、土にカルシウムやマグネシウムのようなミネラル成分があまり含まれていないという特徴があります。

そんな土で育った野菜や果物では、もちろんミネラル成分の含有量が少なくなります。

また、水にも注目してほしいのですが、日本の多くはミネラル成分の少ない「軟水」です。

水には「硬度」というものがあり、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを多く含むほど「硬度が高い」と言い、「硬水」とも呼ばれます。

欧米では水が石灰質の地域を長い月日をかけて流れるため、ミネラルが豊富で硬度が高い傾向にあります。

一方、日本では険しい山岳地帯が多く、雨が地下水として留まる時間が短いため、少ないとはいえ地中のミネラルが溶け出すにも不十分です。

このミネラルの少ない軟水を口している私たち日本人は、飲み水からのカルシウム摂取は期待できません。

その水と土で育った食物ではやはりカルシウム含有量は少ないので、カルシウム不足はなかなか拭えません。

食文化にも問題があり、日本と言えば「和食」ですが、カルシウムが豊富な牛乳やチーズ、ヨーグルトといった乳製品はあまり使われませんので、やはりカルシウムは不足しがちです。

このように、日本人はカルシウム摂取においてかなり不利な環境ですので、全年代を通してカルシウム摂取量が推奨に達しないのです。

日本人にとっては環境も不利ですが、そもそもカルシウム自体が身体に吸収されにくい成分であることも原因の1つです。

食物によって吸収率は違いますが、たいていは2~3割くらいしか吸収されず、残りは便として排出されてしまいます。

ですので、いくらカルシウムの多い食物を摂取しても吸収率の低いものだと効果があまり期待できないので注意してください。

吸収率の高いものですと乳製品がトップクラスで、およそ4割といわれています。

続いて小魚で3割、小松菜で2割の吸収率といわれていますので、いかに乳製品の摂取が大切かがわかるでしょう。

大人になるとたしかに牛乳は飲まなくなりますし、チーズや小魚なども食卓に並ぶことはほとんどありませんからね。

それはカルシウム不足と言われても納得ですよね。

【カルシウム(Ca)】の基準範囲

カルシウムの基準範囲は8.5mg/dL ~ 10.2mg/dLです。

カルシウムには性差はありませんので、男女共通の基準範囲となります。

※基準範囲は施設や文献によって多少前後します。これはそれぞれの機関がそれぞれの条件で、それぞれの母集団から得られたデータから導き出したものを使用しているためであり、多少バラつきがあります。

またカルシウムが高濃度、低濃度のどちらでも生体とって危険な状態となりますので、パニック値(すぐに担当医に知らせて対応を促す)を設定することが多い検査項目です。

例として、高濃度は12.0mg/dL以上、低濃度は6.0mg/dL以下でパニック値とすると良いでしょう。

※基準範囲は施設や文献によって多少前後します。これはそれぞれの機関がそれぞれの条件で、それぞれの母集団から得られたデータから導き出したものを使用しているためであり、多少バラつきがあります。

【カルシウム(Ca)】の臨床的意義

なぜカルシウムを検査するのでしょうか。

それはカルシウム濃度の平衡が保たれているのかを確認するためです。

カルシウム濃度が高すぎても低すぎても生体にとっては危険な状態となりますので、その程度を見ているというのもあります。

また、カルシウム濃度を調整しているのはPTH(Parathroid Hormone:副甲状腺ホルモン)とカルシトニンというホルモンであり、これらが正常に機能しているのか知ることもできます。

カルシウムの骨形成と吸収を担っているのはこの2つのホルモンであり、血中のカルシウムが低下するとカルシウム感知レセプター(カルシウムにだけ敏感に反応するセンサーのようなもの)をもつ副甲状腺から「PTH」が分泌され、骨吸収(骨からカルシウムを溶かして血中に供給する)を促進して血中のカルシウム濃度を上昇させます。

それに加えて、腎臓でのカルシウム再吸収を増加させて本来尿中に捨てられてしまうカルシウムをより多く再吸収し、血中カルシウム濃度を上昇させるという、PTHはこの2つの働きで血中カルシウム濃度を上昇させます。

逆に血中のカルシウム濃度が基準より上昇した場合は甲状腺の濾胞傍C細胞というところから「カルシトニン」が分泌され、骨形成(カルシウムから骨を作る)を促進して血中カルシウム濃度を低下させます。

これが繰り返されて血中のカルシウム濃度はいつも一定に保たれていますので、もし血中のカルシウム濃度に異常があれば、このPTHとカルシトニンの分泌に問題があるのかもしれません。

さらにもう1つ、カルシウムには濃度調整以外にもホルモンが関わっており、食事から摂取されたカルシウムは小腸から吸収されますが、ここで吸収の手助けをしているのが「活性型ビタミンD」です。

この活性型ビタミンDが不足すると、ただでさえ食事からの吸収率の悪いカルシウムがさらに吸収されにくくなりますので骨吸収に頼りがちなり、骨がもろくなりやすくなります。

血中カルシウムが低値の場合は、活性型ビタミンD低下によるカルシウム吸収率の低下かもしれませんのでこちらにも気を配る必要があります。

基本的にはカルシウム濃度については「低下」の頻度が圧倒的に高いですので、主に活性型ビタミンDの低下を筆頭にPTH低下の問題が大切となります。

カルシウムの臨床的意義として、単純に骨の状態を見ているというのもあります。

血中カルシウム濃度が低ければ骨を溶かして血中にカルシウムを供給している状態となりますので、それが続けばやがて骨がもろくなっていきます

これから骨の矯正などで手術を控えている患者や、高齢者で骨粗しょう症が気になる患者には大変重要な検査となります。

【カルシウム(Ca)】が高値を示す状態・疾患

血中カルシウム濃度が高値を示す状態や疾患にはどのようなものがあるでしょうか。

カルシウム濃度高値は低値になることよりは頻度はかなり低いですが、昏睡や致死性不整脈を起こす危険性もあるため注意が必要です。

カルシウム濃度高値を示す代表的な疾患は「原発性副甲状腺機能亢進症」と「悪性腫瘍」です。

原発性副甲状腺機能亢進症はPTH(副甲状腺ホルモン)を過剰に分泌してしまう疾患であり、骨吸収が促進されすぎて血中カルシウム濃度が高値となってしまいます。

また悪性腫瘍によってカルシウム濃度が高値となるのは2つのパターンがあり、1つは癌細胞がPTHと似た作用を持つ蛋白質を過剰に産生することによって引き起こされるもの、もう1つは癌が骨に移転して骨の細胞を破壊することによってカルシウムが血中に放出されるパターンがあります。

前者のパターンでは、乳癌、肺癌、泌尿器・生殖器の癌、ATL(成人T細胞白血病)で多く、後者は乳癌や肺癌などの骨転移、多発性骨髄腫で起こりやすいといわれています。

【カルシウム(Ca)】が低値を示す状態・疾患

血中カルシウム濃度が低値を示す状態や、低値になることでどのようなことが起きるのか、疾患にはどのようなものがあるでしょうか。

カルシウム濃度異常では低値となる方が頻度が高く、高値の時と同様に生命の危険に晒されることもあるため注意が必要です。

カルシウム濃度低値を示す代表的な状態・疾患は「心停止(心不全)」、「骨粗しょう症」、「ビタミンD欠乏症」、「CKD(慢性腎臓病)」、「凝固時間の延長」、「キレートによる脱カルシウム作用」です。

1つずつ見ていきましょう。

  • 心停止、心不全

    カルシウムは前述した通り、筋肉の収縮と拡張に関与する物質であり、心臓の収縮と拡張も同じくカルシウムがその役割を担っています。
    血中カルシウム濃度が減少すると、全身に血液を送り出す役目を果たす心臓の機能にも影響を及ぼすことがあり、心臓の収縮の力が弱まり血液循環が十分に行えなくなることもあります。
    このように何らかの理由で心臓の機能が弱まり、血液循環が不十分になることを「心不全」といい、最悪の場合には心停止すら起こすこともあります。

  • 骨粗しょう症

    骨が「骨形成」と「骨吸収」を繰り返していることはこれまでにご説明しました。
    このとき、骨吸収が骨形成を上回る状況、すなわち血中カルシウムが低下した状態が続くと骨を溶かし続けることになりますので、骨の質と密度が低下していきます。
    簡単にいえば骨がもろくなっていきますので、骨折もしやすくなります。
    このように骨の質と密度が低下して骨がもろくなるなることを「骨粗しょう症」といい、カルシウムの代謝異常以外でも単純に加齢による骨量の自然な減少でも起きます。

  • ビタミンD欠乏症

    小腸では活性型ビタミンDの作用によって食事で摂取されたカルシウムを吸収する手助けが行われていますが、活性型ビタミンDはビタミンDを元に活性化された物質です。
    ですので活性型ビタミンDの元となるビタミンDが欠乏すると、食事によって摂取されたカルシウムが吸収されにくくなりますので血中カルシウム濃度は低下します。
    ちなみにビタミンDは日光によって皮膚から合成されたり、食事によって摂取されることが主となります。

  • CKD(慢性腎臓病)

    CKDや腎不全などで著しく腎機能が低下すると、ビタミンDから活性型ビタミンDにする機能が非常に悪くなりますので、小腸から食事によって摂取されたカルシウムの吸収能力も低下します。
    よって血中カルシウム濃度も低下することがあります。

  • 凝固時間の延長

    カルシウムは二次止血の場面でカルシウムイオンの形で活躍するわけですが、不足すると凝固因子の活性化が通常より量的に遅れますので、血液が凝固するまでの時間が延長することがあります。

  • キレートによる脱カルシウム作用

    これは検査の手技的な内容です。
    検査する項目によって採血管が違い、カルシウムのような生化学検査では、血液を固めて遠心して得られた血清を使用しますので「分離剤入り採血管」というものを使用します。
    赤血球数や白血球数、凝固時間を見る検査では「抗凝固剤」というものが添加された血液を固めないで検査する採血管を使用します。
    抗凝固剤の作用の1つに「脱カルシウム作用」というものがあり、キレート(金属イオンを結合させて別の物質に変えてしまう)によってアルカリ土類金属であるカルシウムを血液中から除去してしまう働きがあります。
    採血して生化学の血液量が足りなかったからといって、このような抗凝固剤入りの採血管から生化学の採血管に血液を追加してしまったがために、検査したらカルシウム値がゼロだった、なんてことも稀にあります。
    特に研修医にありがちな事例ですので気を付けましょう。

【カルシウム(Ca)】の生理的変動

カルシウムは99%が骨や歯に存在し、残りの1%は血中や細胞にありますが、その1%の血中や細胞に存在するカルシウムはさらに分布を細分化できます。

45%は蛋白と結合している「蛋白結合型」、10%は重炭酸やクエン酸などと結合している「酸結合型」、残りのもう45%は原子が電気を帯びてイオンとして存在している「イオン型」となります。

また蛋白結合型では、80%がアルブミンと結合しており、残りの20%がグロブリンと結合しています。

アルブミンは早朝に最低値となり午後最高値になる傾向がありますので、アルブミン結合型の多いカルシウムも同じ変動が見られます。

【カルシウム(Ca)】の検査について ※臨床検査技師向け

カルシウムについてはこれまでの解説で一通り済みましたので、次からはカルシウムの検査について臨床検査技師向けに専門的な知識や検査に影響を及ぼす要因について解説していきます。

一般の方でも知見を広げる意味で、ご興味があればどうぞ!

カルシウムの主な測定法として国家試験的には「Fiske-Subbarow法」や「OCPC法」を覚える必要がありますが、実際の臨床の現場ではこのような古い検査法は一切使用しません。

現在のカルシウム検査の主流な測定法は「アルセナゾⅢ法」や「酵素法」であり、今回は最も使用されているであろう「アルセナゾⅢ法」をご紹介します。

原理としては比色法です。

検体中のカルシウムは試薬中のアルセナゾⅢと複合体を形成し、反応液の色調が赤紫色から紺色に変化します。

この反応液の吸光度を比色測定することにより、カルシウム濃度を求めます。

また、アルセナゾⅢ自体はカルシウムと同じ2価の金属イオンである「マグネシウムイオン」とも反応してしまいますが、試薬に「8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸」を添加することによってマグネシウムイオンをキレートさせて、カルシウム測定の妨げにならないように工夫されています。

溶血、乳び、黄疸による色の影響、測定に干渉する物質等は特にありません。

ただし、ヘパリン以外の各種抗凝固剤には脱カルシウム作用がありますので、混入すると測定値が極低値となります。

【カルシウム(Ca)】のまとめ ※さくっとまとめて見れる一覧表付き

ここまでカルシウムについて1つ1つ網羅的に解説してきましたので、あとはみなさんがご自身のメモリ(脳)にインプットするだけです。

インプットしたら今度はアウトプットしましょう。

周りの方々に最高のドヤ顔で語っていただき、知識をばら撒くと同時にご自身の理解度確認も行ってみてください。

忘れている、理解できていなかったところがあればまたこのブログに戻ってきて、もう一度熟読してみてください。

足りないことがあれば、ぜひお気軽に僕にご連絡ください。

Twitterからでもお問い合わせからでも何でも良いです。

答えをお返しすると同時に必要であればブログに追記しますので、次に閲覧される方々にさらなる情報をばら撒くことができるようになります。

ぜひともご協力いただければ嬉しいです!

また、さくっと確認したいときにまとめて見れる一覧表を下に作成しました。

ぜひご活用ください。

【カルシウム(Ca)】まとめ
カルシウムとは 99%が骨や歯に存在し、残りの1%で様々な重要な生体内反応を手助けしている
役割 筋肉運動や神経伝達、凝固反応をサポート
臨床的意義 骨の状態、全身状態の把握
基準範囲 8.5mg/dL ~ 10.2mg/dL
測定法 アルセナゾⅢ法、酵素法
高値を示す状態・疾患 原発性副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍
低値を示す状態・疾患 心停止(心不全)、骨粗しょう症、ビタミンD欠乏症、CKD(慢性腎臓病)、凝固時間の延長
生理的変動 朝低く午後に高い傾向がある
干渉物質 ヘパリンを除く抗凝固剤の混入で極低値

最後に臨床検査技師のみなさん、今の年収には満足していますか?

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このブログがみなさまのお役に立てれば幸いです。

最後まで、ご閲覧いただきありがとうございました。

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