1. 【無機リン(IP)】とは
無機リン(IP)とは腎や副甲状腺が正常に機能しているのかを間接的に見る検査項目です。
特に生体内での働きがどうというよりも、血中の濃度増減によって臓器の状態を見ることがメインとなります。
生体内の分布としては、無機リンの80%~90%はカルシウムと結合してく骨にリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)として存在し、残りの15%くらいが細胞内に存在しています。
無機リンと関係の深いカルシウムについては下記のブログで紹介しており、この先カルシウムの知識があった方が理解度が間違いなく深まりますので、もしまだ読まれていないのであれば必読推奨です。
カルシウム(Ca)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。
無機リンもカルシウムに同じく、食事によって摂取され活性型ビタミンDのサポートによって小腸から吸収されます。
吸収されたごく少量の無機リンのほとんどはカルシウムと結合してヒドロキシアパタイトとなり骨に貯蔵され、吸収されなかった95%以上の無機リンは尿中または便中に排泄されます。
排泄される無機リンのうち、60%が尿中に、残りは腸管から便中に排泄されます。
尿中に排泄される無機リンは尿細管でそのほとんどが再吸収されるのですが、副甲状腺機能が正常であればPTHがこの再吸収を阻害して無機リンをどんどん尿中に排泄させます。
このようにPTHが血中無機リンの濃度調整に密接に関わっています。
血中カルシウム濃度が低下すると副甲状腺からPTHが分泌され、骨を溶かして血中にカルシウムを供給するわけですが、骨ではヒドロキシアパタイトとしてカルシウムと無機リンが結合していますので、PTHの作用によってカルシウムと一緒に無機リンも血中に溶け出します。
PTHは無機リンの尿細管の再吸収を阻害して尿中への排泄を促進しますので、血中に増えた無機リンは血中に停滞することなくどんどん尿中に排泄されます。
ですので、もし副甲状腺機能が悪くなりPTHの分泌が低下しますと、無機リンの尿中への排泄も減少しますので血中無機リン濃度は高くなります。
逆に副甲状腺機能が異常に亢進しますとPTHがやたら分泌されてしまいますので、無機リンは必要以上に尿中へ排泄されてしまい血中無機リン濃度は低くなります。
また、腎機能が悪くなると尿中への排泄機能が低下しますので、こちらの場合ではPTHに関係なく血中無機リン濃度は上昇します。
このように、無機リンはその血中濃度を検査することによって、腎や副甲状腺が正常に機能しているのか間接的に見ることができる検査項目なのです。
最後に、骨形成関連として関係の深いマグネシウムについても次のブログで解説していますので併せてどうぞ。
マグネシウム(Mg)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。