【臨床検査】HbA1cについて現役臨床検査技師が徹底解説します

みなさんこんにちは!

「Webサイトエンジニア」×「臨床検査技師」のハイブリットおじさんこと、ウエノです。

Webサイトエンジニアではありますが、現役で臨床検査技師を15年しています。

今回は検査でよく測定される「HbA1c」について徹底解説します。

このブログは一般の方が見ても、同業の臨床検査技師が見ても有益となるように、わかりやすくも専門的な知識を散りばめ「超勉強になった!」と感じてもらえることを目的に設計しています。

そしてみなさんがこのブログで得た知識を周りの方々に語り、ドヤ顔をしてもらえれば本望であり、ブログを書いている僕としてもこの上なく嬉しいです。

では、HbA1cについて解説していきます。どうぞっ!

【HbA1c】とは

HbA1cといえば、過去の血糖値の状態を反映する検査項目として有名です。

特に糖尿病の診断や判定に用いられる項目としてよく検査されています。

HbA1cは過去1~2カ月の平均的な血糖値を反映しますので、検査当日の血糖(グルコース)値が高かろうが低くかろうが関係なく血糖値のコントロール状態を提示します。

ですので、普段は間食を何度も摂って食べたい放題をして検査当日だけ絶食していい子にしていても、血糖値は欺けてもHbA1cの値は嘘をつきませんので暴食していたことがすぐに担当医にバレます。

血糖値の管理をするように医師に言われているならば、暴食せずにしっかりと血糖値を管理しましょう。

ざっくりHbA1cについての基礎知識はこのあたりで十分でしょう。

次からは深堀りした内容になっていきますので、知らない人の方が圧倒的に多い知識になります。

ぜひ持ち帰ってドヤってくださいね。

ちなみにHbA1cに密接に関係してくるグルコースについては次で解説していますので、併せてどうぞ。

グルコース(GLU)について一般の方が見ても、臨床検査技師が見ても有益となるように網羅的にどこよりもわかりやすく解説します。実務で携わっているからこそよりリアルで、より詳しく解説できます。ここで得た知識をぜひまわりの方々に語りドヤ顔してくださいね。

まずは「HbA1cはなぜ過去1~2カ月の平均的な血糖(グルコース)値を反映するのか」という解説をします。

HbA1cは文字通り「Hb(ヘモグロビン)」ですので、赤血球内に存在しています。

赤血球が赤く見えるのはヘモグロビンが存在しているからであり、その理由で「血色素」とも呼ばれています。

ヘモグロビンは赤血球内にありながらも「糖付加」という反応を起こし、血中のグルコースと結合します。

これを「糖化(グリケーション)」といい、糖化を受けたヘモグロビンは「HbA1c」と呼ばれるようになります。

血中のグルコースが多ければ多いほどヘモグロビンは糖化しますので、グルコースが多いほどHbA1cは増えていきます

このようにHbA1cとは糖化を受けたヘモグロビンを測定しているわけであり、元をたどれば赤血球に行き着きます。

ということは赤血球の性状に依存することになり、「過去の血糖値を反映する」というのは、じつは赤血球の寿命が密接に関係しているのです。

赤血球の寿命はおよそ90日から120日です。

赤血球は血管内を巡るうちにグルコースと結びつき糖化を受けていきます。

このときの結合反応を「シッフ塩基結合」といい、「不安定型HbA1c」という状態になります。

この状態ではグルコースとの結合が不安定なため、結合が切れてしまうこともあります

その状態のまま血中を巡り、日数が経過すると「アマドリ転移」という反応が起こり、グルコースとの結合が強固となる「安定型HbA1c」へと変化します。

HbA1cの測定は、この「安定型HbA1c」を測定しています。(一部例外あり)

余談ですが、「不安定型HbA1c」は全HbA1c中の10%を占めるといわれており、グルコースとの結合が切れやすく測定値にすこぶる影響を与えてしまうため、測定しないように切り分けるようになっていますのでご安心ください。

さて、「なぜHbA1cは過去1~2カ月の平均的な血糖値を反映するのか」の解答に近づいてきました。

キーポイントは「赤血球の寿命」と「安定型HbA1cになるまでの経過日数」にあります。

前述しましたが、安定型HbA1cになるまでには日数が必要であり、安定型HbA1cの約50%は過去1ヶ月間の間に作られ、約25%は過去2ヶ月、残りの25%が過去3~4ヶ月の間で作られるとされています。

ですので、日数が浅いほどよく血糖値の状態をよく反映しますので、「HbA1cは過去1~2カ月の平均的な血糖値を反映する」となるわけです。

次に「HbA1cというネーミングについて」を解説します。

これは実際に医療講演であった話ですが、「HbA1cにはHbA1aとかHbA1bとかあるんですか?」という質問がありました。

たしかに末尾に「c」がついていますので、他のアルファベットがついたものがあるのではと考える人もいておかしくはないですよね。

ということでそのネーミングについての解説もしておきますね。

はじめにその質問の回答をしておくと「YES」です。

むしろずばり「HbA1a」と「HbA1b」というものがあります。

「HbA1c」の「Hb」の部分は前述した通り「ヘモグロビン」です。

「HbA」は「ヘモグロビンA」という意味になりますが、ヘモグロビンはここから数種類に分岐します。

成人の血中ヘモグロビンは大きく分けて4種類に分類でき、次のようになります。

  1. HbA0(広義ではHbAだけで記述することもあります)

    割合:約90%
    組成:α鎖2本とβ鎖2本からなるベーシックな成人型ヘモグロビン

  2. HbA1

    割合:約7%
    組成:ヘモグロビンA0のβ鎖にグルコースやリン酸化糖などが結合したもの

  3. HbA2

    割合:約2%
    組成:α鎖2本とδ鎖2本で構成されている

  4. HbF

    割合:約0.5%
    組成:α鎖2本とγ鎖2本からなる「胎児型ヘモグロビン」と呼ばれるもの

さらに「HbA1」ではβ鎖に結合した糖の種類によって「HbA1a」、「HbA1b」、「HbA1c」に分類されます。

「HbA1a」はフルクトース-1,6-二リン酸、「HbA1b」はグルコース-6-リン酸、「HbA1c」はグルコースと結合しています。

この「HbA1c」がグルコースと結合した型であり糖尿病の診断に有用だったため、こんなにも名の知れた検査項目になったわけです。

まとめると、ヘモグロビンの中でも通常の型である「HbA0」が糖化を受けて「HbA1」と呼ばれる型になり、結合した糖が何なのか研究されて発見された順に「a」からアルファベットが振られ、その「c」が振られたものがたまたまグルコース結合型だった、というだけの話です。

これが「HbA1cというネーミングについて」の答えです。

最後に「本当にHbA1cは嘘をつかずに過去の血糖値を完全に反映するのか」を解説します。

先に結論をいうと「NO」です。

HbA1cが血糖値を正確に反映しなくなる病態があるため、真の値より高くなったりも低くなったりもすることがあります。

実際に日本糖尿病学会では、糖尿病の診断においてHbA1cのみの反復検査による糖尿病診断は不可としています。

ではどんなときにHbA1cが血糖値を正確に反映しなくなるのでしょうか。

それは「異常ヘモグロビン」を持つ場合と「貧血」の場合です。

異常ヘモグロビンとは、通常のヘモグロビンとは違う構造のヘモグロビンをいい遺伝性のものがほとんどです。

地域性のものや人種性のものもあり、有名なものでいえばヘモグロビンS症(鎌状赤血球症)というものがあります。

これはアメリカの黒人の10%がヘモグロビンS症の原因になる遺伝子を1つ保有している人種性のものです。

日本人でも3000人に1人は何らかの異常ヘモグロビンを持っており、その種類は200種類以上になると言われています。

異常ヘモグロビンがあると、どうHbA1cの測定に影響してくるのでしょうか。

それは異常ヘモグロビンの「電荷」が鍵を握っています。

HbA1cの測定法には主に「HPLC法」、「免疫法」、「酵素法」という3つの測定法が用いられおり、大多数の施設で使用されている「HPLC法」の場合にこの「電荷」が大きく影響してきます。

HPLC法では「カラム」という電荷ごとにヘモグロビン成分を分離するものを使用し、それぞれを分画として表します。

異常ヘモグロビンはその種類によって電荷がマチマチであるため、どこに分離されてくるかはわかりません

ですので、異常ヘモグロビンがあるとどこかの分画に混ざってきてしまうため、分画図がおかしくなります。

よってそのおかしな分画図のおかげで正しくHbA1cの分画が認識できず、測定値が高くも低くもなったりしてしまいます。

一方、「免疫法」と「酵素法」は測定法が大きく異なり、電荷は関係ありませんので異常ヘモグロビンの影響をほとんど受けずに検査できます。

もし異常ヘモグロビンが疑われ「HPLC法」で測定しているようであれば、こちらの「免疫法」や「酵素法」で測定してみると良いですよ。

ただし、当院のように「HPLC法」も「酵素法」も導入し併用して使用している施設は少なく、多くの施設は「HPLC法」のみですのでどこの施設でもできる話ではないですが。

次に「貧血」の場合の話です。

HbA1cと貧血の関係で最も有名なのは「溶血性貧血」であり、これは赤血球が寿命を迎える前に血管内で破壊されてしまう疾患です。

ということは、安定型HbA1cになる前、もしくは安定型HbA1cになった赤血球が通常よりも早く破壊されてしまうという事態が発生するため、HbA1c値は低くなってしまいます。

また赤血球が破壊された分を新しく産生する関係で、HbA1cの割合が相対的に低くなってしまうため、HbA1c値はやはり低くなってしまいます。

このような理由がありますので、「本当にHbA1cは嘘をつかずに過去の血糖値を完全に反映するのか」という問いの答えは「NO」となります。

【HbA1c】の基準範囲

HbA1cの基準範囲(NGSP値)は 4.3% ~ 5.8%です。

NGSP値とは国際標準値のことで、現在どの施設でも採用されている値です。

JDS(日本糖尿病学会)値というものもあり、日本人が日本人をターゲットにデータを集計したものから算出した基準範囲もありますが、基本的にはJDS値より約0.4%高いNGSP値で報告するように定められています。

HbA1cには性差はありませんので、男女共通の基準範囲となります。

※基準範囲は施設や文献によって多少前後します。これはそれぞれの機関がそれぞれの条件で、それぞれの母集団から得られたデータから導き出したものを使用しているためであり、多少バラつきがあります。

また、日本糖尿病学会で定められている血糖コントロール目標値としては次のようになります。

  • 血糖正常化を目指すときの目標値(正常値):6.0%未満
  • 合併症を予防するための治療目標値:7.0%未満
  • 治療強化が困難な際の目標:8.0%未満

HbA1cが6.5以上は糖尿病の危険信号となりますのでお気を付けください。

【HbA1c】の臨床的意義

なぜHbA1cを検査するのか。

それは過去1~2カ月の血糖(グルコース)値のコントロール状態を把握するためです。

糖尿病患者さんの長期コントロール指標としても検査されることが多いです。

血糖値では食事に左右されやすく検査当日の血糖値だけでは判断が難しいため、一時的な生理条件に左右されずに長期的な血糖値を反映するHbA1cと併用することが通常です。

ただし、異常ヘモグロビンや貧血関連がある場合はHbA1cもアテになりませんので、血糖(グルコース)値だけでなく、過去1週間以内の血糖値のコントロール状態を反映する「1.5AG(アンヒドログルシトール)」という検査や、過去1~2週間の血糖値のコントロール状態を反映する「グリコアルブミン」などの他の検査を併用することもあります。

もしくは、異常ヘモグロビンが疑われる場合に限りですが「測定法を変えてみる」という選択肢もあります。

【HbA1c】が高値を示す状態・疾患

HbA1cが高値を示す状態で代表的なのは、ご存知の通り「糖尿病」です。

上でも解説しましたが、血液を循環しているうちに赤血球内のヘモグロビン(HbA)がグルコースと結合したものがHbA1cであり、グルコースが多いほど結合したヘモグロビンも多くなりますので、HbA1c値が高くなります

そうすることによって、通常は4.3%~5.8%ぐらいの割合で収まっているHbA1cが、HbA(またはHbA0)の割合を下げて上昇してきます。

日本糖尿病学会ではHbA1cが「6.5%以上」で糖尿病が強く疑われるとされています。

【HbA1c】が低値を示す状態・疾患

HbA1cが低値を示す状態・疾患は臨床的に意義はほとんどありません。

ただ、どんな場合に低値になるのか解説しておくと、持続的な低血糖状態や異常ヘモグロビンの存在、貧血の場合が挙げられます。

持続的な低血糖状態の場合は、単純に血糖値が低いのでヘグロビンと結合するグルコースが少ないためHbA1cが低くなります。

異常ヘモグロビンと貧血の場合は前述した通り、それぞれ電荷、赤血球の寿命が関係してきます。

【HbA1c】の生理的変動

HbA1cの生理的変動としては加齢と共に軽度上昇します。

【HbA1c】の検査について ※臨床検査技師向け

HbA1cについてはこれまでの解説で一通り済みましたので、次からはHbA1cの検査について臨床検査技師向けに専門的な知識や検査に影響を及ぼす要因について解説していきます。

一般の方でも知見を広げる意味で、ご興味があればどうぞ!

HbA1cの主な測定方法は3つあり、「HPLC法」「免疫法」「酵素法」があります。

「HPLC法」とは前述した通り、各種ヘモグロビンを「電荷」の違いによって溶出し、それぞれの吸光度を測定します。

そして全ヘモグロビンに対して安定型HbA1c(S-HbA1c)の百分率を求め、それをHbA1cとする測定法です。

各種ヘモグロビンを電荷の違いによって溶出するには、「カラム」という陽イオン交換基含有小粒子径充填剤を使用します。

このカラムを用いて溶血液で希釈した全血検体を分離すると、HbA1a、HbA1b、HbF、不安定型HbA1c、安定型HbA1c、そして主成分のHbA0のようにプラス電荷の小さい順に溶出されますので、それぞれの吸光度を測定します。

得られた吸光度を秒数ごとにグラフに描画し、その面積を求めて総面積からの%に変換したものが検査結果となります。

このときに得られたグラフをクロマトグラム(分画図)といい、どの要素がどのくらいの秒数に描かれてくるのかは各機器メーカーによって設定されており、それを各要素として%が求められています。

異常ヘモグロビンが検出されるとこのグラフの分布がズレてきますので、機器側で認識異常となりますのでエラーとなるわけです。

特徴は「1分以内という短時間で測定ができる」ことと、「遠心の必要がない手間のかからない検査」であることです。

次に「免疫法」ですが、免疫法には「ラテックス凝集比濁法」と「免疫阻害比濁法」の2種類があり、どちらもHbA1cの糖が結合したβ鎖N末端部分を特異的に認識する抗体を用いて検査します。

HPLC法は専用機がないと測定できませんが、この免疫法ならびに酵素法は汎用機に搭載できますので大量検体の処理に向いています。

また、異常ヘモグロビンの影響をほとんど受けることはありませんので、外国人患者の多い施設では異常ヘモグロビンを検出することもよくある関係で免疫法や酵素法が適任でしょう。

最後に酵素法ですが、酵素法ではヘモグロビンのβ鎖N末端の糖化ジペプチドを特異的に乖離するタンパク分解酵素(プロテアーゼ)を用い、フルクトシルペプチドオキシダーゼで発色させて比色測定します。

免疫法も酵素法もヘモグロビンのβ鎖N末端に作用して測定する方法をとります。

HbA1cの測定法には前述した通り「HPLC法」「免疫法」「酵素法」の3つがありますが、これから導入するならどの測定法が良いのか、というお話をします。

結論としては、一概にどれが良いとは言えず、「どこに重点を置くか」によってどれを選ぶかは変わりますので、ご施設の状況や考え方次第となります。

次にそれぞれの測定法についてのメリットとデメリットを挙げていきますので、ご施設に合ったものを選ぶと良いでしょう。

まずはHPLC法について。

<HPLC法のメリット>

  • 測定から結果が出るまで1分以内と超速。
  • 遠心がいらない。

<HPLC法のデメリット>

  • 汎用機には乗らないため専用機が必要。
  • 異常ヘモグロビンの影響を受ける。
  • 専用機のメンテナンス項目である「カラム交換」はどこのメーカーも約2500検体測定が目安であるため、検体数が多い施設では頻繁に交換が必要。

次に免疫法について。

<免疫法のメリット>

  • 異常ヘモグロビンの影響をほぼ受けない。
  • 汎用機に乗せることができるため大量検体の処理が可能。

<免疫法のデメリット>

  • 遠心が必要であり、測定時間も10分以上かかる。
  • 汎用機の場合、全血検体の検査はサンプルプローブや反応セル(反応容器)の汚染が激しく、メンテナンスの頻度が上がったり、備品の寿命を縮める。
  • 免疫法の宿命である「非特異反応」のリスク。微小フィブリンや自己抗体などHb1cとは別の物質と反応してしまう可能性があり、また異常ヘモグロビンで性状の似通る構造を持つものだと反応してしまう可能性がある。(偽高値になる)

最後に酵素法について。

<酵素法のメリット>

  • 異常ヘモグロビンの影響をほぼ受けない。
  • 汎用機に乗せることができるため大量検体の処理が可能。

<酵素法のデメリット>

  • 遠心が必要であり、測定時間も10分以上かかる。
  • 汎用機の場合、全血検体の検査はサンプルプローブや反応セル(反応容器)の汚染が激しく、メンテナンスの頻度が上がったり、備品の寿命を縮める。
  • 試薬にプロテアーゼ(蛋白分解酵素)がモロに添加されており、試薬補充のときなどにほんの少しでも他の試薬に飛んでしまった場合に試薬内の蛋白を片っ端から分解してしまうため使用不能にしてしまう。

です。

どれを採用するかは迷うかもしれませんが、僕としては専用機での酵素法がおすすめです。

じつはHbA1cを酵素法で測定する専用機があり、例えばミナリスメディカル社の「DM-JACK」という機械があります。

当院でも運用しており、HbA1cだけでなくGA(グリコアルブミン)も測定できますので、糖尿病内科を持っている施設ではかなり重宝しますよ。

グルコースも測定できますので、検査室のないクリニックで糖尿病の検査がしたいという場合にもお役に立てるでしょう。

また、専用機ならプロテアーゼ飛散のリスクや、サンプルプローブや反応セルの汚染も気にしなくて済みますので安心して運用できますよ。

汎用機だと汚染など何かしらの影響を及ぼすと他の測定項目にも影響が及んでしまいますので、正直少し怖いですね。

酵素法をおすすめする理由としては、やはり異常ヘモグロビンの影響をほぼ受けずに結果を返せることです。

当院では酵素法とHPLC法を採用しており、外来患者と入院患者をHPLC法で測定していますが、1日200件前後のうち毎日1人か2人は異常ヘモグロビンで測定不能となっています。(当院の機器は古いのでバリアントモードやロングモードのような異常ヘモグロビン対応モードがないため測定不能となります…)

結果が出ないようでは検査の意味がなくなってしまうため、異常ヘモグロビンの影響をほぼ受けず干渉物質の影響もほとんどない酵素法が、HbA1cの検査としては最も安定性が高いといって良いでしょう。

ということで、「専用機による酵素法での運用がおすすめ」というのが僕の意見です。

ちなみにHbA1cの遠心条件は800rpm5分ですので、生化学検体の遠心条件とは異なりますので注意してください。

みなさんの中には「酵素法は遠心がめんどくさいから嫌だ」とか言う人もいるかもしれませんが、「測定不能」や「異常ヘモグロビン検出のため参考値」で返された患者さんも臨床医も困ってしまいますので、そのあたりもよく考えて選定してくださいね。

HbA1cの検査に影響を与える要因として「溶血」が挙げられます。

何らかの要因で溶血する場合、壊れる赤血球の優先順位としてまず老化しているものから壊れていきます。

HbA1cとはグルコースと結合したヘモグロビンであり、結合するまでにはある程度時間がかかることは前述しました。

ということはHbA1cはわりと老化した赤血球であることが多いため、溶血時には真っ先に壊れていきます。

この理由により、溶血の時にはHbA1cは低値になることが多いです。

ただし、免疫法・酵素法では遠心分離した血球を検査に用いますのでこの溶血の影響を受けますが、HPLC法では全血検体で測定しますので溶血の影響を受けません。

測定値に及ぼす影響度合いとしては、どんなに溶血していてもせいぜい0.3%程度です。

そもそも検体が溶血している場合は基本的には採血のし直しとなりますので、溶血の影響はあまり考えなくても良いでしょう。

また、免疫法では非特異反応が起きえますので、自己抗体や異好抗体、類似物質などの交叉反応のリスクがあります。

HBA1c以外の物質とも反応してしまいますので、非特異反応を起こすと偽高値になります。

それと繰り返しになりますが、HPLC法では異常ヘモグロビンの影響を受けますので、異常ヘモグロビンを持つ患者検体では検査結果はあてになりません。

【HbA1c】のまとめ ※さくっとまとめて見れる一覧表付き

ここまでHbA1cについて1つ1つ網羅的に解説してきましたので、あとはみなさんがご自身のメモリ(脳)にインプットするだけです。

インプットしたら今度はアウトプットしましょう。

周りの方々に最高のドヤ顔で語っていただき、知識をばら撒くと同時にご自身の理解度確認も行ってみてください。

忘れている、理解できていなかったところがあればまたこのブログに戻ってきて、もう一度熟読してみてください。

足りないことがあれば、ぜひお気軽に僕にご連絡ください。

Twitterからでもお問い合わせからでも何でも良いです。

答えをお返しすると同時に必要であればブログに追記しますので、次に閲覧される方々にさらなる情報をばら撒くことができるようになります。

ぜひともご協力いただければ嬉しいです!

また、さくっと確認したいときにまとめて見れる一覧表を下に作成しました。

ぜひご活用ください。

【HbA1c】まとめ
HbA1cとは 赤血球内のヘモグロビンとグルコースが結合したもの
役割 生体内での役割はない
臨床的意義 過去1~2カ月の血糖(グルコース)値のコントロール状態を把握できる
基準範囲 4.3% ~ 5.8%
測定法 HPLC法、免疫法、酵素法
高値を示す状態・疾患 糖尿病、異常ヘモグロビン症
低値を示す状態・疾患 持続的な低血糖状態、異常ヘモグロビン症、貧血
生理的変動 加齢と共に軽度上昇
干渉物質 免疫法・酵素法では溶血で低値、HPLC法では異常ヘモグロビン検出で高値にも低値にも、酵素法で非特異反応を起こすと偽高値

最後に臨床検査技師のみなさん、今の年収には満足していますか?

次のブログでは臨床検査技師における稼ぎ方をご紹介しています。

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このブログがみなさまのお役に立てれば幸いです。

最後まで、ご閲覧いただきありがとうございました。

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