【臨床検査】ピペット検定とピペットの正しい扱い方を解説します

みなさんこんにちは!

「Webサイトエンジニア」×「臨床検査技師」のハイブリットおじさんこと、ウエノです。

臨床検査技師を15年しながら独学でプログラミングを勉強し、Webサイトエンジニアとしてフリーランスで活動しています。

今回は臨床検査技師のマストアイテムである「ピペット(エッペン)」についての解説です。

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ピペットの正しい使い方なんてよくわからないよ。臨床化学の二級試験でも通用するピペット操作って何?そういえばこのまえ、水を勢いよく吸い過ぎてピペットの中まで入っちゃたけど、壊れてないかな。その確認方法があれば知りたいな。

こんなお悩み、よくありますよね。

学校でピペットを扱っていたのにも関わらず、実際にそれが正しかったのか、そういえばそんな指導されたことなんてないからわからない、そもそも覚えていない…いろいろあるでしょう。

また、臨床化学の二級試験の後半戦では実技試験となり、必ずピペットを使用するように組まれています。

ここで「ピペットが正しく扱えているかどうか」が問われます。

ピペット操作について審査員によってはかなり厳しく審査されることもあり、正しく扱えていないとされだけで不合格にされることもあると聞いています。

現場では、水や血液をピペットで吸ったら勢いが良すぎてピペット内部まで入ってしまうこと、よくありますよね。

普通に考えればわかることですが、ピペット内部に液体を侵入させてしまうと故障の原因や吸い上げ量の誤差に繋がってしまいます。

ということで、今回は「ピペット」についてその正しい扱い方と、正確に吸い上げることができているのか確認できる「ピペット検定」の仕方について解説します。

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ピペット検定では正確なピペット操作が要求され、ピペットが正しく扱えないと検定が上手くいきませんので、どちらにせよ正しいピペット操作はマスター必須です。

ピペット検定とは、ピペットの点検方法として一般的に用いられているものであり、「規定量を正確に吐出できているか」を検定する方法です。

要はピペットの精度管理と考えてもらえればOKです。

ピペットとはいえその精度を管理するものですので、定期的に実施することが望ましいです。

ピペットは定期的に点検を行わないと、正確に規定量を吐出できているか気付けるタイミングがありません。

規定量吐出できていないことに気付かず使用していると、凍結乾燥品のキャリブレーターやコントロールの溶解も狂い、「精確(精密で正確)」な精度管理が行えません。

実際に起きた場面でケーススタディをすると、普段はピペット検定をクリアしたピペットでコントロールを溶解し、それで精度管理をしているとします。

あるとき担当者が代わり、ピペット検定を行っていないピペットでコントロールを溶かし、測定すると管理幅から大きく外れてしまいました。

そのピペットはいつからあったのかわからないくらい古く、部品も所々損傷している計量用ではない「ただ大口だからたくさん吸える」という理由で置かれていたものでした。

担当者はピペットへの知識が乏しくエッペンならどれも同じと考えていたようで、知識のなさを大々的に披露してしまった恥ずかしい例として、現場の人たちの脳裏に刻まれました。

このようにピペット1つで検査技師としての力量すら見えてしまいますので、みなさんは正しいピペットの知識を得て自信溢れる素晴らしい検査技師になってくださいね。

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ではここからは「ピペット検定の手順」と「正しいピペット操作」という、実技的な話をしていきます。

流れとしてはピペット検定を行いながら正しいピペット操作をマスターしていく、というスタイルになります。

今回はダブルノック式エッペンの例で解説します。

ダブルノック式エッペンというのは2段階押せるタイプのエッペンです。

ピペット(エッペン)には「容量固定タイプ」と「容量可変タイプ」の2種類があり、容量固定タイプはそれぞれの容量を、容量可変タイプは設定できる容量の下限と中間と上限の3点を行います。

例えば100μL-1000μLの容量可変タイプだったら、100μLと500μLと1000μLの3点を検定します。

各点で10回ずつ検定を行い、1つのピペットで計30回検定を行っていきます。

まずはピペット検定の準備として、

  1. 検定するピペット(エッペン)
  2. チップ
  3. 注射用蒸留水(純粋装置から採水したイオン交換水は秤量値に負誤差を与えるため注射用蒸留水が望ましいです)
  4. 電子天秤(0.001gまであるものをご用意ください)
  5. ビーカーなどの受け容器
  6. メモ用紙

用意ができたら、空調のない密室に移動しピペット検定を行います。

※空調などの風流があると秤量値が不安定になりますので、極力空調のない密室が望ましいです。

①電子天秤の電源をON

②天秤にビーカーなどの受け容器を乗せ「ゼロ合わせ」を行う。

電子天秤をゼロ合わせ

③メモリがゼロになっていることを確認し、空気の揺らぎでメモリが不安定になっていないかも確認する。

④ピペットに新しいチップをセットし検定を行う容量にセットした後、別容器に用意した注射用蒸留水を第1ストップ(プランジャーが最初に止まる所)の範囲で3回吸い上げ・排出を繰り返し、チップに水分を馴染ませる。

チップに水分を馴染ませる

⑤ゆっくりと一定のスピードで溶液を吸い上げ、3秒待ってゆっくりと液からチップを引き上げる。

チップを引き上げる

⑥電子天秤に乗せた受け容器内の底にチップ先端が接触しないようにし、プランジャーを最後まで(2段階)押して溶液を完全に排出する。

溶液を完全に排出

⑦チップの先端を受け容器の内壁に軽くタッチし、先端の外側に付着している溶液を除去しピペットを取り出す。

チップの先端を受け容器の内壁に軽くタッチ

⑧メモリ(重さ)を用紙に記入する。

⑨ゼロ合わせを行い、⑤に戻りこの動作を計10回行う。⑥では受け容器内に吐出した蒸留水が残っているため、水面にチップ先端が接触しないように実施する。

➉結果をまとめて、付属の取扱説明書などで許容幅内に収まっているか確認する。

以上がピペット検定の手順となります。

例として、僕が作成したピペット検定用入力エクセルでどんな感じか次にお見せしますね。

ピペット検定で得られた結果を入力すると、次のようになります。

ピペット検定で得られた結果を入力した例

評価の仕方としては「CVが2%未満になっているか」、また「許容範囲内に秤量値が収まっているか」です。

合格の場合はテプラなどで「合格 7/1~9/30」のように合格日とその有効期限を記載してピペットに貼っておくとわかりやすいですね。

ピペット検定の有効期限に決まりはないですが、3カ月や半年に1度は更新するようにしておくと良いですよ。

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ちなみにこのピペット検定用入力エクセルがほしい人はお問い合わせからご連絡いただくか、TwitterからDMいただければ対応します。

お気軽にご相談ください。

ピペットは臨床検査技師のマストアイテムではありますが、学校でも正しいピペット操作については教えてもらえていないのではないでしょうか。

まず僕が出会った中でピペット操作がしっかりとできていた検査技師はほとんどいません。

ピペットは精度管理物質などを溶解させるのに使用する大事なアイテムですので、正しいピペット操作ができてないと精度管理も不安定となります。

また希釈操作の場合でいえば、ほとんどの検査技師はいきなりチップで吸い上げて先端外側をキムワイプでふき取り、溶液にチップを突っ込み何度も出し入れして共洗いする、というように誤差でまくりの方法で行い測定しています。

今回は希釈操作のように「溶液を混ぜる」という動作はありませんが、必要であれば混和は「共洗い」ではなくミキサーで行うのが適切です。

吸い上げる際に3回出し入れしてチップに溶液を馴染ませているので共洗いが必要なく、チップ先端に付着した溶液をキムワイプでふき取る動作もチップ内部の溶液を吸ってしまう恐れがあるのでやるべきではありません。

わざわざふき取らなくても液面に付けないで排出すれば誤差にならないので、なおさら共洗いはするべきではありませんね。

マストアイテムであるピペットなのにも関わらず、なかなか理解のある検査技師がいないのが残念です。

少しの誤差が検査値や精度管理に影響しますので、ピペットを正しく扱えてこそ真の臨床検査技師であることは明白です。

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このブログで学んだみなさんなら大丈夫だと思いますので、ぜひ周りの検査技師に正しいピペット操作を教えてあげてくださいね。

そしてみなさん朗報です

ここまで読み進めていただいたみなさんだけに、ピペットにまつわる豆知識を特別に2つお教えします。

1つ目は、エッペンドルフのような正規品チップを持っているメーカーのピペット検定についてです。

正規品のチップとアジア機材などの模造品ではどちらがより正確に秤量できるでしょうか、というお話です。

やってみればわかりますが、圧倒的に正規品のチップの方が安定して目標値に近い秤量データを打ち出します。

容量が大きくなればなるほど模造品ではブレが大きくなり、1000μLあたりでも許容幅に収まらなくもなったりします。

ですのでキャリブレーターやコントロールなどの重要な管理試料物質を溶解させる場合は、なるべく正規品のチップを使うことをおすすめします。

2つ目はピペットの正確度についてです。

1000uLを分注する場合、次の内どちらのエッペンの方がより正確に1000μLを分注することができるでしょうか。

  1. 100uL-1000ulの容量可変ピペット
  2. 500uL-5000uLの容量可変ピペット

答えは2番ですね。

これもピペット検定をやってみればわかりますが、エッペンの性質上、容量が最小に近いほど正確に秤量できます。

よって1番では1000μLは最大値ですので、このエッペンでは最も不安定なポイントとなります。

2番では1000μLは容量の最小に近いため、かなり正確に秤量できます。

今は答えだけ教えますが、ぜひみなさんはピペット検定をやって自分の目で確かめてほしいと思います。

こういう検証は必ずみんさんの力になりますよ。

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このブログがみなさまのお役に立てれば幸いです。

最後まで、ご閲覧いただきありがとうございました。

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