7-1. 【アルブミン(ALB)】の主な測定法
アルブミンの主な測定法は「BCP改良法」です。
アルブミンの測定法は問題点を抱えながらも運用されてきた背景を持ち、つい最近その問題点を解消したBCP改良法が考案された、なかなかおもしろい経歴のある試薬として生化学ガチ勢の中では(たぶん)有名です。(少なくても僕はそう思っています!)
まずアルブミンの測定法におけるgold standard(基準となる測定法)は、抗体を用いた「免疫法」です。
しかしコストの関係で通常の検査室で使用される自動測定機に乗せることは困難だったため、その代替法として汎用的に使用できる測定法として「BCG法」と「BCP法」が1970年代に開発されました。
ところが「BCG法」と「BCP法」にはそれぞれ測定に問題がありました。
1つずつ解説していきますね。
BCG法の問題点は「アルブミンだけでなくグロブリンにも反応してしまうこと」でした。
特に急性相反応物質(ハプトグロビンなど)との反応性が強く、特異性(反応する物質の選択性をいい、反応する物質が1つに限定されるほど高いとなる)に欠けることが大きな問題でした。
もしグロブリンが増えてしまう疾患である肝硬変やネフローゼ症候群になってしまうと、アルブミン値がゲタを履いた状態になってしまうため、かなり正確性の欠ける検査データになってしまいます。
一方、BCP法はBCG法とは違いグロブリンと反応しないアルブミンへの特異性の高い素晴らしい検査法でしたが、「還元型アルブミンと酸化型アルブミンで反応性が違う」という問題点がありました。
「還元型アルブミン(HMP:ヒトメルカプトアルブミン)」とはアルブミンのシステイン残基がフリーになっているものをいい、「酸化型アルブミン(HNP:ヒトノンメルカプトアルブミン)」とはシステイン残基に血液中の遊離システインがジスルフィド結合したものをいいます。
健常人では還元型アルブミンが約75%、酸化型アルブミンが約23%であり、残りの約2%は「超酸化型」と呼ばれるスルフェン酸、スルフィン酸、スルフォン酸という物質です。
これらの型によるアルブミンの違いによって反応性が異なり、アルブミン値を安定して真値により近い状態で臨床側に返すことは難しい状況でした。
このようにそれぞれの検査法では問題点がありながらも運用され、BCG法を使用している検査室が多かった印象があります。
時代は進み1990年後半、ついにBCG法とBCP法の問題点を解消した測定法「BCP改良法」が我が国で考案されました。
このBCP改良法こそが現在でも最も普及しているアルブミンの測定法であり、汎用的なアルブミン測定において最も優れた測定法として流通しています。
BCP法をBCP改良法へ押し上げたカギは、前処理でアルブミンをすべて酸化型にしてしまうことで反応性を一律にしてからBCP法で定量してしまうという、逆転満塁サヨナラホームラン級のアイデアです。
この見事な発案によってアルブミンの検査法は大きく進化を遂げることができました。
細かいことですが、還元型アルブミンと酸化型アルブミンは可逆性(状態を行き来できること。この場合では還元型と酸化型を行き来できるということになります)ですが、超酸化型は非可逆性(状態を行き来できない)のため反応性が異なります。
ですのでBCP改良法といえどgold standardである免疫法とは、その超酸化型が存在している分(健常人で約2%)だけ乖離します。
超マニアックな知識ですが、知っておくときっとドヤれますよ。
次にBCP改良法の測定法についてさくっと解説します。
検体中のアルブミンは界面活性剤の存在下でBCP(ブロモクレゾールパープル)と結合して、アルブミンブロモクレゾールパープル複合体を形成します。
この形成したアルブミンブロモクレゾールパープル複合体は青紫色を呈しますので、これを比色測定することによりアルブミン濃度を求めます。
色が濃ければ濃いほどアルブミン濃度が高いことを示します。