1. 【尿素窒素(UN)】とは
病院などでよく検査される「尿素窒素」とは、血液中に「尿素」がどれくらい停滞しているかを知るために検査されている項目です。
尿素値を直接測定することは難しいので、尿素に含まれる窒素成分(これを尿素窒素と呼んでいます)を測定することによって間接的に尿素値を検査しています。
よって尿素と尿素窒素はまったく同じ動きをします。
ですので尿素値が高い、すなわち尿素窒素値が高いと腎機能が低下していることがわかります。
正常な状態では尿素は腎臓から尿中に排泄されますが、腎臓の機能が低下すると尿素は尿中に排泄されにくくなるため血中の濃度が上昇します。
それに伴って血中の尿素窒素値も上昇しますので、尿素窒素を測定することにより腎臓の機能状態を知ることができます。
尿素窒素は検査結果欄には単に「UN(Urea Nitrogen)」と表記されていたり、血中の尿素窒素ということで「BUN(Blood Urea Nitrogen)」と表記されていたりと施設によって異なりますが、意味合いとしては同じです。
ただし、尿中の尿素窒素を表記するには「U-UN」としますが、「U-BUN」とはしませんのでご注意ください。
ちなみに尿素((NH2)2CO)と尿素窒素(N)の関係についてもう少し深堀りしておくと、尿素の分子量は60であり、その中に窒素成分(N)が2分子ありますので尿素窒素の分子量は28となります。
よって尿素窒素値に2.14(60/28)を乗じると尿素値に変換できますので、豆知識として知っておくと良いでしょう。
次に尿素の生成と排出について、その流れを解説します。
まずは尿素の生成について。
食事で摂取された蛋白はアミノ酸へと分解されてエネルギーとして消費された際に、アンモニア(NH3)という生体内において有毒な成分を生成します。
アンモニアは毒性の高い成分ですので、このまま放置するわけにはいきません。
そこで活躍するのが肝臓であり、解毒機構である尿素回路(オルニチンサイクルともいう)によってアンモニアは無毒で水に溶けやすい尿素に変換されます。
このように尿素は生成され、変換された尿素は腎臓に運ばれて糸球体から尿中に漏出し、身体の外に排泄されていきます。
これが生体内における尿素の流れであり、起点となる蛋白の摂取が少ないと尿素窒素値は低くなり、腎機能が低下すれば排泄が上手くいかなくなりますので血中に停滞し尿素窒素値は上昇してきます。
尿素窒素が高くなったり低くくなったりしたときは、このメカニズムを思い出してくださいね。
またこれは余談ですが、尿素には保湿成分として機能の高い物質ですので、蛋白摂取量が少なくて尿素窒素値が低下したりすると「かゆみ」が生じることもあります。
かゆみの原因には尿素が絡んでいることも多いため、じつは市販されているハンドクリームや保湿製品にはたいてい尿素が含まれているのはご存知でしたか?
尿素はただの生体内の機能指標だけでなく、このように保湿成分としても活躍している物質なのです。
ちょっと意外ですよね。