7-2. 就職先:検査センターについて
まずは「そもそも検査センターって何?」という解説から始めていきます。
検査センターというのは、契約しているクリニックや病院などの各施設から検体を回収し、スクリーニング検査からマニアックな検査まで様々に請け負ってくれる検査の外部委託会社です。
どこの病院施設でも必ずどこかの検査センターに検査を委託しています。
「え?病院に検査室があるのに何で検査センターに委託するの?」と思うかもしれませんが、測定する専用の検査機器を揃えたり、試薬のランニングコストの関係で大半の検査は赤字になりますので、そのような採算の合わない検査は検査センターにお任せします。
病院で測定している検査は、基本的に「ほとんどの患者が測定する検査」や「すぐに結果がほしい検査」、「医者がどうしても院内に必要だ」という検査項目しか扱いませんので、いくら大規模な病院でも必ず1つはどこかの検査センターと契約しています。
ですので検査センターは医療の現場には欠かせない大切な存在なのです。
検査センターの有名どころといえば、「BML」、「SRL」、「LSI」、「保健科学研究所」、「ファルコバイオシステムズ」といったところでしょうか。
また、検査センターには「ブランチラボ」というサービスがあり、病院の一室をお借りして、そこに検査機器と臨床検査技師を派遣するというものもありますので、「病院勤務が嫌だから検査センターに就職したのに、ブランチで結局病院勤務になってしまった…」というのはよくある話です。(これ僕です…)
基本的にはブランチは検体検査だけであり、患者に触れることはご法度ですので生理検査や採血は行いません。(そもそも検査センターは検体検査のみを扱う企業ですので、生理検査や採血のノウハウはありません)
さて、検査センターについてある程度わかったところで、次に検査センターの特徴について解説していきます。
- たくさんの検査項目に触れられる。
- 基本は夜の勤務なため給与が比較的高い。
- 昼夜逆転生活。
- 「臨床検査技師」というより「会社員」感が強い。
- ブランチは悪。
検査センターの規模やビジネスモデルにもよりますが、大手では世の中の検査のほとんどができるくらいに網羅されています。
ですので検査センター勤務では、病院で勤務するより数多くの検査項目に触れられることができるでしょう。
検査センターの特徴として最大なのは「基本は夜の勤務であること」です。
ルート(検体回収)担当の方が、昼過ぎから夕方にかけて契約している各施設をまわって検体を回収します。
よって検査センターに検体が集まるのは夕方以降ですので、臨床検査技師はそのあたりに出勤し夜検査を行い、朝に各施設に検査結果を送信してその日の仕事は終了となります。
そしてまた夕方あたりに出勤して朝に帰る…という流れになりますので、検査センター勤務になるとこのように昼夜逆転生活となります。
ですので、女性にはホルモンの関係もありますのであまりおすすめはしません。
給与面でいえば、検査センター勤務になると夜に働きますので、深夜手当がつく関係でだいたい3割増しくらいになります。
しかし、なかには普通に日中に検査をする部署もありますので、部署によっては「日中検査の通常給与」となる場合もありますのご注意ください。
また、検査センターは病院と違って「会社」です。
会社の中で検査をするわけですから、まわりはスーツを着た人ばかりで自分が「臨床検査技師」であることより「会社員」という意識の方が強くなってきますので、つい自分の立ち位置を忘れがちです。
だからといってデメリットはありませんが、いちおう特徴ということで挙げておきました。
最後に「ブランチは悪」についてです。
ブランチをやって喜ぶのは経営陣だけで、現場は最悪です。
まず知っておいてほしいのは、ブランチを導入する病院のタイプには2タイプあり、1つは「完全ブランチ化」で、もう1つは「病院職員とブランチのハイブリットタイプ」です。
「完全ブランチ化」は読んで字の如く、検体検査はすべてブランチ化し、病院は検体検査室を持ちません。
一方、「病院職員とブランチのハイブリットタイプ」は検体検査室を一部ブランチ化し、部署によって病院職員とブランチ技師で切り分けて仕事をするタイプです。
どちらに転んでも最悪で、なぜならブランチということは「お客様の施設で仕事をさせてもらう」スタンスですので、何があっても文句を言えません。
明らかに病院側に問題があっても、なぜかブランチ技師の責任にされることも日常茶飯事であり、同じ検査室で同じ臨床検査技師として働いているのに立場の違いで肩身がせまく何が起きても何も言えないなど、とにかくストレスが絶えません。
そんな状況ですので、僕の知る限りではブランチはどこも退職と入職のサイクルが超高速でフル回転しており、常に新人を教えている状態ですのでルーチンがまわらないという悪循環を起こしていました。
それはそうですよね、ブランチで派遣されても良いことなど1つもありませんから。
1年も立たないうちにやめていく新人が後を絶たず、採用では来る人拒まずでどんな人材でも採用、そしてそのままブランチにまわして頭数だけ揃える…もう現場は常にカオスです。
という理由で「ブランチは悪」と書きました。
これがすべてではないことを祈りますが、僕が見聞きしてきたブランチはどこもこのような状況でした。
もしあなたがブランチに派遣されることが決まってしまったら、腹をくくって覚悟を決めるか、退職を検討した方が良いでしょう。