2-5. 【プール血清の作り方⑤】小分け分注
やっと仕上げです。
濾過し終わったプール血清を、ここまでブログを読み進めてきたみなさんならしこたま貯めておいたであろうバイアルに小分け分注していきます。
え?バイアルなんて用意してない?それは困りましたね。何か代用できるものをご自身でお探しください。
あまり代用品はおすすめしませんが、最悪、BMLのS-1スピッツあたりが良いですよ。
S-1スピッツなら凍結にも耐えられますし、10mL入りますし、試験管立てにもすっぽりとはまって綺麗に保管できます。
ただ、みなさんの施設の責任者の方に確認してからにしてくださいね。勝手に使ってあとで怒られたとかやめてくださいね。
さて、小分け用の容器も用意できたと思いますので、さっそく分注していきましょう!
ところでみなさんはスターラーはお持ちですか?ないと超厳しいですよ。
プール血清において1番重要なのはこの「小分け分注」です!
「え!?分注するだけなのにーっっっ!?」となると思いますが、じつはここで「正しい知識」と「確かな機材」がないと間違いなく失敗します。
失敗というか、バイアル間差でまくりの「使えないプール血清」ができあがります。
冗談抜きでスターラーがないと、ここまでの努力がすべて無駄になってしまいます。
スターラーをお持ちでなく、でもプール血清を作りたい!な人は、上司に相談して買ってもらいましょう。
なぜスターラーが絶対的に必要なのかをいいますと、血清は本っっ当にとにかく混ざりにくいんです!
ガチャガチャと容器を激しく振ったところで、ぜんっぜん混ざっていません。
見た感じは色も均一でいかにも混ざっているように見えていても、目に見えない成分はぜんぜん混ざっていません。
このままバイアルに小分け分注しようもんなら、バイアル間差でまくりでまったく使い物になりません。
僕もスターラーなしでやったことがありますが、バイアル間差でデータが安定しなくてまったく使い物になりませんでした。
まだかけだしだった頃の僕はスターラーなんて持っていませんでしたし、存在すら知りませんでした。
さらに知識も乏しい身でしたので、なぜバイアルごとに測定データがバラつくのかなんてぜんぜんわかりませんでした。
もちろんプール血清作成の工程のそれぞれの意味も余裕で知りませんでしたし、考えたこともありませんでした。
ですので風習的に作っていたプール血清に「こんな手間もかかって使えないもの、いつまでも作ってられっか!」となり、作成を取り止めたこともありました。(先輩がことごとく退職されてしまい、僕の暴走を止める方がいなかったんですよ)
今思えば情けない限りですが、スターラーを使うかどうかでバイアル間差に圧倒的に違いがでてきます。
ということでみなさん、スターラーの用意はできましたよね?
まずはスターラーにプール血清量の3倍以上はあるビーカーなり何なりの容器を乗せ、そこにマグネットを投下しプール血清を流し込みます。(ビーカーのサイズは何でも良いですが、プール血清の飛び跳ね防止のためなるべく大きいものが良いですよ)
400rpm(回転)くらいで10分間かき混ぜましょう。※あふれるようなら回転数を下げるより、より大きい容器を用意してください。あまり回転数を下げてしまうと混ざりませんよ?
よく攪拌できたら、そのまま攪拌している状態のまま分注します。
当院では1~10mLの可変エッペンを使用し、10mLにロックオンして分注しています。
10mLくらいいっきに吸い上げることができれば何でも良いです。
何でも良いですと言っておきながら、じつは他にいっきに10mL吸い上げられるシロモノがあるのかどうかはわからないのですが、何食わぬ顔でそう言っておきますね。
吸い上げる時のポイントとしては、プール血清を超攪拌しながら吸い上げるわけですが、とにかく上層が泡だらけなので中層または下層を吸い上げると良いですよ。
まるでコップに注いだばかりのビールのようですので、泡を回避するのはほぼ無理ですが、なるべく中層、下層を目掛けてチップを挿入すると良いです。
それでも泡が結構入ってしまいますが、4~5mLくらいは泡のないところを吸えているはずですので、必要分は分注できるはずです。
これでプール血清の出来上がりです。
データ取りを20日間くらい行ってデータを集計し、さっそく使用開始といきましょう!
最後にそれぞれのバイアルに作成日とか使用期間を表記し、データ取りに使用しない分は冷凍庫に眠らせておきましょう。