1. 【クレアチニン(CRE)】とは
クレアチニン(CRE)とは筋運動の代謝産物であり、腎機能評価の指標となる物質です。
筋運動と腎機能ではまったく関係がないように感じられますが、クレアチニンの代謝経路においてはこの2つが大切なポイントとなります。
まず筋肉中ではクレアチニンと似たような名前の「クレアチン」と、「クレアチンリン酸」という物質がエネルギーの産生と貯蔵を相互的に行っています。
エネルギーというのはATP(アデノシン三リン酸)のことであり、生物の授業でも出てきた物質ですね。
このATPがエネルギーとして消費されるとリン酸が1つ外れてADP(アデノシン二リン酸)という物質になり、エネルギー放出準備状態となります。
筋肉は運動時に大量にエネルギーを消費しますので、運動していない安静状態の時にクレアチンとATPからクレアチンリン酸というエネルギー貯蔵物質になってスタンバイします。
そしていざ運動が起きてエネルギーが必要となったときに、クレアチンリン酸がADPにリン酸を1つ渡してADPがATPになり、エネルギーとして消費されます。
一方、リン酸を1つ失ったクレアチンリン酸はクレアチンになり、食事などで作られたATPを消費して安静時に再びクレアチンリン酸となってエネルギー貯蔵物質としてスタンバイします。
さて、筋肉とエネルギーの動きはわかりましたが、肝心のクレアチニンはどこに関係してくるのでしょうか。
ATPが必要になった時にクレアチンリン酸からリン酸が1つ外れてADPをATPにするときに、じつは一部だけクレアチンにならずにクレアチニンになります。(クレアチンにならなかった分は肝臓でクレアチンが生成されて筋肉中に補充されます)
クレアチニンは生体内における役割を持たず、ただ尿中に排泄されるだけの物質ですので、クレアチンリン酸の老廃物と解釈できます。
しかも毎日ほぼ一定量がクレアチニンになりそのほぼすべてが尿中に排泄されますので、腎機能が障害されると血中に停滞しクレアチニン値は高値になります。
ですので腎機能評価に有用なのです。
ただし、クレアチニンは筋運動に由来した物質ですので、筋肉の量によって生成されるクレアチン量は違ってきます。
すなわち個体差がかなりあるということになりますので、クレアチニン値が高値だからと言って腎機能が悪いとは直結しないこともあります。
あくまで健常者の95%が値する範囲が基準範囲ですので、ゴリマッチョだと高値になったり、寝たきりで筋肉量が異常に減少していたりすると低値になったりもします。
とはいえ筋肉量による変動は小さいですので、クレアチニン値が微妙に高値ぐらいに限り腎機能障害だけでなく筋肉量を気にすると良いでしょう。